質問:ホテルは予約するもの?

 いつも写真と解説記事を興味深く、また楽しく拝見しています。
 さて、お聞きしたいことは、三井さんが世界各地を長期に旅行中での宿舎の見つけ方です。
 一般的には、インタ-ネット検索や旅行代理店経由で予め申し込むことが多い状況ですが、三井さんのような長期滞在の場合には、それ以外の方法が多いかとと思います。
 特に、現地宿舎の探し方(事前か現地か)、費用、宿泊時の配慮事項などあればよろしくお願いします。
 滞在国や各地の慣習や気候・風土などによって多少違いがあるのでしょうか・・・・・
 多くの場合、三井さんは一人旅かとおもいますが、その場合のポイントや今までの経験例などお願いいたします。
 
 

三井の答え

 僕は基本的にホテルの予約はしません。いつも直接宿まで行って「部屋はありますか?」と聞いています。満室だったら他を当たるし、部屋があれば見せてもらって泊まるかどうかを決めます。
 
 それでも、その街にある宿が全て満室で途方に暮れたという経験は少ないです。ハイシーズンでもない限り、アジアで宿にあぶれることはあまりないと思います。
 
 もっともこれは「宿の質にこだわらなければ」という条件付きであって、「バスタブがあって、エアコン付きで、夜は静かで」といった旅行者としてごくまっとうな要求を満たすホテルが必要なら、やはり事前に予約した方がいいでしょう。地球の歩き方なら「中級~高級」、ロンリープラネットなら「Top end」「Midrange」に区分されているようなホテルですね。
 
 僕の宿の選び方は実に適当です。9割は宿の外観だけで決めてしまいます(題して「宿は見た目が9割!」なんてね)。安っぽそうな外観の宿は実際に安くて薄汚いし、ある程度立派な「なり」をした宿だと、部屋もまずまず清潔で値段もそれなりに高いのです。ぼくはいつもほどほどに汚い宿を選んでいます。
 
 そして、宿を選ぶ際に僕がもっとも重視しているのは、「宿の居心地の良さ」や「ファシリティーの充実」ではなくて、「すぐに見つかるかどうか」なのです。町に着いたら、すぐに宿を決めて荷物を置き、町歩きを始めたいと思っているので、宿探しに時間をかけたくないのです。
 
 だから目についた宿に入ってみて、「悪くないな」と思ったら、スパッとそこに決めてしまいます。何軒も宿を回って条件の良さそうなものを選ぶ、ということはほとんどしません。どうせ一日しか泊まらないんだし(ほぼ毎日移動します)、安くても高くても、清潔でも汚くても、どっちでもいいのです。
 
 例えば、昨日滞在していたインドのワランガルという町では、1泊75ルピー(200円)とインドでもかなり安い部類の宿に泊まりました。しかし、ここは値段相応かそれ以上に汚くて(数週間掃除された形跡がなく、机には埃が積もっていた)、幹線道路に面しているので夜中までうるさくて、というかなり悲惨なところでした。はっきり言ってハズレだったのですが、それでも「どうせ一晩寝るだけなんだから」と諦めて早々に眠りました。
 
 反対に、今日泊まっているハイダラバードのホテルは1泊475ルピー(1300円)もしました。これは僕がこれまでインドで泊まった宿の中でももっとも値段が高い宿なのですが、さすがに高いだけのことはあって、とても静かだし、蛇口をひねれば熱いお湯が出る(!)し、ベッドも広々としています。しかしここに決めたのも、「たまには高い宿でくつろぎたい」と思っていたからではなく、「たまたま看板が目に入ったから」という理由なのです。
 
 このように、僕は宿にこだわらないで旅を続けています。もちろん安くて清潔なら言うことはないけれど、ある程度なら高くても納得してしまうし、ある程度なら汚くても諦めてしまう。要するに目の前に宿があればオーケーなのです。
 
 ご質問の件に戻りますが、一度思い切ってホテルを予約しないで旅をしてみるのもいいんじゃないですか? ひょっとしたらトラブルに巻き込まれるかもしれませんが、でもきっと何とかなりますよ。今まで泊まったことのない安宿に泊まってみるというのも、新鮮な経験になるかもしれません。
 
 予定を決めてそれに沿った旅よりも、偶然に任せる旅の方が断然面白い。僕はそう思います。
 
 

宿は見かけだけでは判断できない

 僕は宿選びに関してそれほど強いこだわりを持っているわけではありません。基本的に100円安い宿を求めて右往左往するのは時間とエネルギーの無駄だと考えているので、たいていの場合は「ま、これでいいか」という感じで、すんなり決めてしまいます。
 
 「宿は見かけだけでは判断できない」というのが、インド旅行の教訓です。プーリで泊まった宿は、値段も安いし新築で小綺麗だし、「これはいい物件を見つけた」と喜んでいたのです。
 
 ところが思わぬところに問題が潜んでいたのでした。天井からぶら下がっているファンのスピードがものすごいスピードに固定されたまま調節できないのです。一応丸いつまみは付いているのです。しかし、右に回しても左に捻っても変わらない。ただのお飾りです。
 
 ファンはブンブンブンという派手な風切り音を立てて唸るように回っています。ちょうど窓を開け放った列車に乗っているような感じ。このままでは寝られないとスイッチを切ったのだけど、そうすると今度は暑くて眠れないのです。気温は正確にはわからないけれど、たぶん夜でも30度近くはあったでしょう。体中からじっとりと汗がしみ出してくるのです。
 
 狭い部屋のベッドに男二人が並んで横になっている上に、その男が二人とも180cmを超える大柄なものだから、暑苦しくて仕方ないのです(同行者のウィリアムはかなりマッチョな人です)。
 
 風はなく、空気は動かない。動いていたとしても、僕らの部屋の小さな窓からは何も入ってこない。そんなわけで、仕方なく僕はもう一度ファンのスイッチを入れました。しかしやはりうるさいのです。結局ファンのスイッチを入れても眠れないし、切っても眠れないというどうしようもない状態のまま、一夜を明かすことになったのでした。
 
 

感電シャワーに気を付けろ

 思わぬ問題が潜んでいたといえば、スリランカで泊まった宿もひどかったですね。スリランカは赤道近くにある熱帯の国なので、ホットシャワーを備えている安宿というのはほとんどないのですが、アヌーラダブラという観光地の少し高めの宿では、ホットシャワーが使えるというのです。少なくとも主人はそう言っている。その宿はスリランカの平均的宿賃よりもかなり高めではあったのですが、その主人の言葉にひかれて泊まることに決めたのでした。
 
 アジアでホットシャワーの付いている安宿というのは、だいたいどこも小さな電気温水器で部屋ごとに温水を作っているのです。電気温水器はパワーが弱く、お湯がちょろちょろとしか供給されないので、ないよりはマシという程度の代物なのです。
 
 しかし僕がこの日泊まった宿には、電気温水器はありませんでした。その代わりに、シャワーの口から天井に向けて一本の電気コードが伸びているのです。変なシャワーだな、と思ったのですが、まぁあまり気にせずに蛇口をひねりました。
 
 最初は冷たかったお湯は、すぐに温かくなりました。予想通り湯量はたいしたことないけど、久しぶりに浴びる温水に満足感を覚えながら、シャワーの向きを変えようと口金を触ったその時でした。「ビリッ」という強いショックが右手に走ったのです。
 
 僕は反射的に腕を引きました。そして慌てて蛇口を捻ってお湯を止めました。右手は軽く痺れています。その感覚には覚えがありました。以前、濡れた手で電気コンセントに触れたときの「ビリッ」と同じ感覚でした。そう、このシャワーは漏電していたのです。お湯と共に電気も流すシャワーだったわけです。オー、マイ、ガッ!
 
 たぶんこのシャワーは蛇口の中に直接電熱器を仕込んであるのでしょう。それが経年劣化によって漏電するようになり、シャワーの口金を触ると感電することになった。そう理解するのが自然でしょう。
 
 しかしまぁ、何という危険な仕掛けを作ったのか。このような仕組みのシャワーは他のスリランカの宿はおろか、どこの国でも見かけたことがないものなのです。感電の恐ろしさを知らない素人が作ったものか、あるいは泊まり客を感電死させて所持金を奪おうという算段なのか・・・。
 
 とにかく「感電シャワー」には気を付けて下さい。シャワーの口から緑色のコードが伸びていたら、その宿は避けた方が良い。それが僕がスリランカで学んだ教訓のひとつです。