インドは世界第2位の人口大国で、13億もの人が住んでいる。これは実に日本人の10倍、アメリカ人の4倍という膨大な数だ。僕らはどうしても「インド」あるいは「インド人」をひとくくりにして語ろうとするけれど、それはかなり無謀な試みである。宗教も文化も言語も多種多様なこの国の印象は、旅人によって大きく異なるし、旅する地域や季節によっても全く違う顔を見せるからだ。

 13億のインド人の中には、いい人もいれば悪い人もいるし、賢い人もいればバカな人もいる。ただ残念なのは、平気で人を騙したり、法外な値段をふっかけてくる輩が、外国人旅行者が集中する観光地に集中しているという事実だ。インド初心者にとって、これはあまりにも高いハードルだ。いくら気をつけていても、万全の備えをしていても、初インドで嫌な目に遭わなかった旅人はほとんどいないだろう。

 僕にとっての初インドも印象はかなり悪かった。「なんか感じ悪い国だな」と思った。インドという国もインド人も好きにはなれなかった。ミャンマーやネパールのように人が優しくて、居心地がよくて、「一目惚れ」しちゃうような国とは違って、インドは「会えば会うほど良さがわかる」国だ。スルメのように噛めば噛むほど味が出てくる。深く知れば知るほど、もっと知りたくなる。だから一度目のインドで嫌な目に遭った人も、諦めずにぜひ再チャレンジして欲しい。

 もし、インドがタイみたいに旅人に優しかったり、シンガポールのように清潔だったり、台湾みたいにグルメが充実していたりしていれば、今ごろわんさか外国人が訪れる観光大国になっていたはずだ。でもそうはなっていない。インドという国は、相変わらずの仏頂面で、「あなた旅行者? うん、別に来たければ来てもいいけどさ、歓待はしないよ。トラブルは自己責任ってことでよろしくね」という態度を崩していない。

 そのクールなツンデレぶりが、またインドの良さでもあるんだけどね。

 

india18-60899ヨガで、カレーで、バーフバリでインドの興味を持った人は、次はぜひ実際にインドを訪れてみてください。ステレオタイプな思い込みや日本の常識がひっくり返る経験が待っています。そしてもちろん、渋イケメンたちも待っています。

 

india18-70248ゴチャゴチャしたもの、無秩序なもの、朽ちていくもの。こうしたものに(美とは言わないまでも)面白さを感じるセンスを持っている人は、高確率でインドを好きになると思う。店の中のとっ散らかった様子と、店主の落ち着きっぷりとのギャップが、実にインドらしかった。

 

india18-69093インド北部ウッタルプラデシュ州でチャイを作っていた男が、やたらとイケメンだった。街角で一杯5ルピーのチャイを作るのに、このカッコ良さは必要ないだろう。こういう「無駄にカッコいい男」を見つけると、つい嬉しくなってカメラを向けてしまう。

 

india18-36657雲ひとつない青空の中に立つ、細マッチョな男。インド中部マハラシュトラ州のレンガ工場で働く労働者だ。汚れたジーンズにタンクトップという軽装が、働く男をカッコよく見せている。

 

india18-47988インドの製粉所で働く男が渋すぎる。どのような人生を歩んできたら、この渋みと佇まいが身につくのだろう。カメラを向けると「どうして俺を撮るんだ?」と怪訝な顔をされた。自分の渋イケメンぶりを全く意識していないのも良かった。

 

india18-68225インドの牛乳配達人は自転車で移動する。ブリキ缶に入ったミルクをお客に量り売りするのだ。古い自転車も、街角に差し込む光も、おじさんの何気ないポーズも、すべてがインドらしくて、思わずシャッターを切った。

 

india18-49681インド西部グジャラート州の染色工場で働く男。工場のボイラー係として一日中釜に石炭をくべる仕事をしていた。甘いマスクだが、すでに「渋イケメン化」への道筋がはっきりと見えている気がする。

 

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インド北西部ラジャスタン州で花飾りを作る職人が、やたらとイケメンだった。少女マンガに出てくる王子様のように赤い薔薇の似合う男前だが、とにかく保守的な土地柄なので、自由恋愛なんてせずに、親が決めた相手と結婚するのだろう。そういう「イケメンの無駄遣い」が、インドの魅力でもある。

 

india18-69076インドの街角でロティーをこねていた職人の佇まいが素敵だったのでカメラを向けた。渋イケメンはどこにでもいるし、誰にでも見つけることができる。普段見過ごしているものに光を当てるだけだから、本当に簡単なんだ。

 

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