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  たびそら > 旅行記 > 2005年


 それぞれの土地に、誇りを持って暮らしている人がいる。大地に足を着け、痩せた土地を耕し、雨を待ちながら暮らす人々がいる。そんな人々の素顔を、僕は美しいと思う。その美しさを永遠に記録したいと願う。
 だから僕は旅を続けている。
 貧しさとはいったい何だろう。豊かさとはいったい何だろう。そんな疑問を胸に抱きながら。


Chapter.1 ジャパン・トキオ  | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
「ジャパン・トキオというのは、ネパールで大ヒットした歌のタイトルなんです」とアルンが説明してくれた。「3年ぐらい前からかな、ラジオで毎日流れるようになったんです。今では知らない人はいませんよ」

Chapter.2 ダサイン・神に捧げる血  | 1 | 2 | 3 |
 振り上げられた大ナタは、男の頭上でほんの一瞬停止する。磨き上げられた刃先が、強い日差しを受けて鈍く光る。男は呼吸を止め、両目をかっと見開き、渾身の力を込めて、一気にナタを振り下ろす。ズブンという鈍い音が響く。古いサンドバックを思いきり殴りつけたような重い音だ。

Chapter.3 サリタの現実  | 1 | 2 | 3 | ←CD-ROMで公開中
 まっすぐな瞳を持つ少女サリタ。最初の出会いから4年半後、僕はまたサリタの住む村を訪ねた。彼女が置かれた状況は相変わらず厳しかった。父親はいい加減な男で、母親が4人の子供を育てている。サリタは学校へ通うのも難しい。
 そんな中、僕は意外な言葉を聞くことになった。「あなたはサリタと結婚するの?」 どうしてそんな話になるのか、僕にはよくわからなかった。

Chapter.4 タライ平原の出会い  | 1 | 2 | 3 | 4 | ←CD-ROMで公開中
 夕焼け空の下、弟を背負って歩く女の子。長く伸びる影。積み上げられた稲の束。飛び交うとんぼたち。そんな風景の中を歩いていると、初めての土地であるにもかかわらず、不思議に心が落ち着いた。それはこの風景が僕の記憶の奥底にある懐かしさと繋がっているからなのだろう。



Chapter.1 ゴールの惨状  | 1 | 2 | 3 |
 インドネシア沖で大地震が発生してから3週間後。僕はスリランカの津波被災地を巡る旅を始めた。幸か不幸か、僕は津波関連のニュース映像を全くと言っていいほど見ていなかった。だから二十万もの人が命を落とした大災害をイメージする手掛かりすらないような状態で、スリランカに降り立ったのだった。

Chapter.2 Life goes on  | 1 | 2 | 3 | 4 |
 破壊された町を歩いているときに、僕の頭に何度も浮かんだのが「Life goes on」というフレーズだった。悲しみ、嘆き、怒り。そういうものを乗り越えて、やはり人は生き続けなければいけない。朝が来て、夜が来て、また朝が来る。津波のあとも日常は続いていくのだ。

Chapter.3 津波が残した傷跡  | 1 | 2 | 3 |
 彼は恋人を失った心の痛みを肉体の傷として体に刻み込みたかったのだろう。その痛みの記憶を忘れないための印を求めたのだ。あるいは彼は自分だけが助かって、彼女が死んでしまった事が、どうしても許せなくて、自分自身に罰を与えようとしたのかもしれない。

Chapter.4 たくさんの神々 | 1 | 2 | 3 | 4 |
 ジャフナの廃墟は、津波以外の要因――20年続いた内戦の結果――が作り出したものだった。津波の残した傷跡と、戦争によってもたらされた破壊が、これほどまでに似通っていることに、僕は大きなショックを受けた。
 哀しい町ジャフナは、スリランカの苦難の歴史を象徴する場所だった。



Chapter.1 アチェへの道  | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ←CD-ROMで公開中
 スリランカの津波被災地を旅した後、僕がインドネシアのアチェ州に向かったのは当然の成り行きだったように思う。今回の大津波の震源地であるスマトラ島アチェ州に行かない限り、津波被害の本当の姿は見えてこないだろうと思ったのだ。

Chapter.2 フォトグラファーの特別授業  | 1 | 2 | 3 | ←CD-ROMで公開中
「実はあなたにお願いがあるんです」と彼女はおもむろに切り出した。「もし明日、暇な時間があったら、うちの学校に来て話をしてもらえないかしら?」
「僕が学校に行くんですか?」
「ええ、生徒達とディスカッションをしてもらいたいの」

Chapter.3 世界一の笑顔  | 1 | 2 | ←CD-ROMで公開中
 復興現場には絶えず笑い声が響いていた。どの顔も生き生きとしていた。僕は人々の明るさと背後にある凄まじい破壊とのギャップに困惑していた。町の雰囲気はスリランカのツナミエリアとは明らかに異なっていたし、新聞やテレビで馴染みのある被災地のイメージとも全くかけ離れていた。



Chapter.1 初めての二人旅  | 1 | 2 | 3 |
 3ヶ月ものあいだアジアの国々を巡っていた僕が、急に北アフリカのモロッコに飛ぶことになったのは、ウィリアムという名前の日本在住のアメリカ人から届いた1通のメールがきっかけだった。

Chapter.2 アトラス山脈の風の歌  | 1 | 2 | 3 |
 女たちは背負ったものの重さを忘れるために、歌を唄っているのかもしれない。どことなく哀しみを帯びたメロディーを聞きながら、僕はそう思う。決して楽しそうな歌声ではない。しかし深い峡谷に反響する7人のハーモニーには、人の心を静かに打つ強さのようなものがあった。

Chapter.3 サハラ砂漠を飛ぶ  | 1 | 2 | 3 | 4 |
 サハラ砂漠の入り口にある町メルズーガを訪れたときに、サン=テグジュペリのようにサハラ砂漠の上空を自由に飛べるという話を聞きつけた。こんなチャンスは滅多にないだろうということで、僕らも空を飛んでみることにした。

Chapter.4 女には苦労するよ  | 1 | 2 | 3 |
 振り返ってみれば、マラケシュで出会った占いばあさんの一言が、全てを言い当てていたのかもしれない。
「あんた、女には気を付けなさいよ。絶対女に苦労するから」
 彼女はいくぶんしわがれた声で、僕にそう告げた。



Chapter.1 ラオスで迎える酒正月  | 1 | 2 | 3 | ←CD-ROMで公開中
 ラオスの女は酔っぱらうと人に絡むタチの人が多かった。普段はおとなしくシャイであるはずのラオス人女性が、酒を飲むとセクハラオヤジみたいに豹変していく姿には、かなり驚かされた。

Chapter.2 国道1号線に乗って  | 1 | 2 | 3 | ←CD-ROMで公開中
「田植えを手伝えっていうのかい?」
 僕が身振りで訊ねると、ヒンとソンは「そうよ」といたずらっぽい笑顔で頷いた。もちろん冗談のつもりなのだろう。でも僕はそれを真に受けたふりをして、「それじゃ、始めようか」とシャツの袖をまくり上げた。

Chapter.3 ラオスで食べたもの  | 1 | 2 | ←CD-ROMで公開中
「これ、何の肉? 牛肉?」
 僕はガイドブックの最後に載っているフレーズ集を使って、おばさんに訊ねてみた。おばさんは首を振った。牛肉でもないし、豚肉でも鶏肉でもないという。
「じゃあ何の肉なのさ?」


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