バングラデシュは我々の想像力をはるかに超えるようなヘンなものが、さりげなくあったりする国である。
この見事なオブジェ(という以外に何と呼べばいいのだろう?)はバングラデシュ第二の都市チッタゴンの駅のホームに置かれていた。
ただの粗大ゴミである。リクシャの残骸が折り重なっているだけだ。しかしこの過剰さはいったい何だろう。使えなくなったゴミを邪魔だから重ねて置いている、というよりは、計算し尽くされたバランスを保ちながら何かを主張しているように見えるのである。
これはアートなのだ、と僕は勝手に結論づけた。昔、赤瀬川原平が街角にある無用の長物(しかし見方を変えれば楽しめるもの)を「トマソン」と名付けたが、このチッタゴン駅のオブジェもそれと同じ匂いがするのである。
困ったような表情の犬も、このアートのスパイスとなってくれた。