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ビエントンからナムヌーンへ向かう道は、ラオスの国道1号線沿いの旅の最後を飾るのに相応しい(?)悲惨なものだった。
僕はこの道に「ゼブラロード」という名前を勝手に付けた。舗装された黒い道と、舗装の剥げた白い道がほぼ等間隔で続いていたからだ。これはたぶん雨季の激しいスコールによって流された土砂が、アスファルトも一緒に押し流してしまった結果生まれたのだと思われる。荒れた道を定期的に補修するような余裕は、ラオス政府にはないのである。
そんな悪夢のようなゼブラロードを抜け、ムアンカムという町に着いたのは、出発から7時間後の午後1時過ぎだった。
早朝からずっと何も食べていなかったので、とりあえず腹ごしらえをしようとバスターミナルの横にある食堂に入った。北ラオスでは旅行者が満足に食事を取れるような食堂が少なかった。地元民には外食をするような余裕も習慣もないので、麺料理のフーを出す店があればいい方だったのだ。
ところが、この食堂にはフーがないという。「それじゃ何があるの?」と身振りで訊ねると、おばさんはテーブルの上に置かれた大きな鍋の蓋を開けた。そこには骨付き肉の煮込みが、どっさりと入っていた。
「ひとつ食べてみなよ」
おばさんが渡してくれた肉に、僕は遠慮なくかぶりついた。肉は少し硬かったが、味は悪くなかった。おそらくは肉の臭みを消すために、ネギや生姜などと一緒に長い時間煮込んであるので、かなりスパイシーだった。
「これ、何の肉? 牛肉?」
僕はガイドブックの最後に載っているフレーズ集を使って、おばさんに訊ねてみた。おばさんは首を振った。牛肉でもないし、豚肉でも鶏肉でもないという。
「じゃあ何の肉なのさ?」
僕がもう一度訊くと、おばさんはテーブルの下を指さした。 |
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――ラオス編 Chapter.3-1 「ラオスで食べたもの」より
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