なんて美しいんだろう。白い砂と青い海。その単調な世界に混じった赤い点。その組み合わせが絶妙だった。ありふれた日常の中に宿る偶然の輝き。僕が南インドを旅するあいだ探し続けていたのは、こんなシーンだったのだ。そう直感した。
 女たちは砂浜に足を踏ん張って、沖に仕掛けた漁網をぐいぐいと引き上げていた。それは紛れもない力仕事の現場だった。誰が見ているわけでもなかった。それなのに女たちはまるでハレの日のような鮮やかな衣装を身につけている。そのことが不思議でならなかった。

South India ( 2007/01)