ハザン省北部には、水牛を使った昔ながら方法で田植えを行う人々がいた。どの田んぼでも、主役は女たちだった。水牛に鋤を引かせて代掻きをしているのも女だったし、水牛を操って土と水をかき混ぜているのも女だった。右手に持った鞭を振るって、三頭の巨大な水牛を意のままに操る女の姿は、オーケストラの指揮者のように優雅で力強かった。
 そんな女たち姿を、僕は写真に撮った。彼女たちと同じ場所に立ち、深い泥の感触を足先で味わいながら歩き回った。粘りけのある泥から足を抜き、一歩前に踏み出す。それだけでもバランスを取るのに苦労したが、温かくぬるっとした泥土の感触はとても気持ち良かった。
 この村で暮らす人の営みは、この土と水が支えているのだ。その事実を理屈抜きで感じることができたのだった。

Vietnam ( 2007/03)