激しいスコールが降る中、一人の若者が砂浜で歌をうたっていた。両手を高く広げ、顔を空に向け、口の中に雨が入るのも気にせずに大声で歌っていた。
 叩きつけるスコールによって海面は白く煙り、灰色の空との境界線がぼんやりとかすんでいた。今、世界のすべては雨に包まれていた。その中心で若者は歌い踊っていた。
 いったい彼は何をしているんだろう。何を目的として踊っているんだろう。雨乞い? あるいは豊漁のための祈り? しかしどれだけ考えてみても、その行動を説明することはできなかった。彼はただ踊りたいから踊り、歌いたいから歌っているのだ。そうとしか思えなかった。
 若者は雨降りをそのまま受け入れていた。自分の力でどうにかなるものではなく、空から降ってくるものとして。天からの恵みであり、同時に厳しい試練でもある雨。彼はそれをただ全身で受け止めていた。その歌と踊りは、雨と混じり合ってひとつになっていた。彼は雨と一体化し、喜びを共に分かち合う仲間になっていた。

East Timor( 2007/12)