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明かり取りの窓がいくつかあるだけの薄暗い工場で、サリー姿の女が働いている。米を入れた缶を肩に担いだ女は、小さな階段を上り、轟音を立てながら回転するドラムの中に籾米を注ぎ込んでいく。どれほど昔から使われているのだろう。「産業遺産」と呼んでもいいほど古びた精米機が、闇の中で鈍い光を放っている。精米の過程で出た細かな埃のせいで光が拡散し、部屋の中には粒子の粗い古いキネマを見ているような非現実感が漂っている。
バングラデシュ西部、夏の酷暑で知られるラジシャヒ県で見かけた精米所は、印象的な光が支配する場所だった。焼け付くような強い日差しに覆われた外界とは完全に隔離された、暗いモノトーンの世界。その中で埃にまみれて働く人々の姿には、希有な美しさがあった。
単調な日常に埋もれてしまいそうな、その淡い美しさに僕はカメラを向けた。実直な働き者の姿を、それを浮かび上がらせる粗い光を、記憶の中に刻み込むためにシャッターを押した。
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Bangladesh( 2008/04) |
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