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たまたま訪れた小学校で、授業の様子を廊下から眺めているだけの女の子がいた。仲間外れとか、罰を受けているわけではなく、自分の意志で教室に入らないのだ。家が貧しくて教科書やノートを買うお金がないのだろうか。それとも全く別の事情があるのだろうか。
少女は分数の足し算の授業を窓越しに覗き込んでいたが、その内容を理解しているのかどうかはわからなかった。唇を真一文字に結び、壁にもたれかかったままの姿勢で、じっと黒板を見つめている。そんな少女の姿には心を静かに打つものがあった。
僕は少女の横顔にカメラを向けた。シャッター音に気が付いた少女が不思議そうな顔で僕の方を向いた。僕が彼女に微笑みかけると、真一文字に結んだ彼女の口元に笑顔のカケラのようなものが浮かんだ。僕らが交わすことができたコミュニケーションはそれだけだった。
彼女が教室に入らない理由は、結局最後までわからなかった。そして算数の授業が終わると、彼女は学校から姿を消した。 |
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