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Meiktila , Myanmar ( 2004/2)
「ヘイタイさん。ヘイタイさん」
 僕の姿を見ると、ドンニュイさんはそう繰り返した。第二次大戦中、日本軍がミャンマーで連合軍と戦っていた頃、彼女は一人の日本人の兵隊と恋に落ちたのだという。その当時は片言の日本語を話せたのだが、今ではほとんど覚えていない。もう60年も前のことなのだ。
「ナカタさん。ナカタさん。ヘイタイさん」
 遠い昔の記憶を辿るように、彼女は繰り返した。