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最初の出会いから3年後に、僕はもう一度「まっすぐな瞳」の少女・サリタの住む村を訪れた。3年という年月は少女にとっては決して短い時間ではない。体が大きく成長し、様々な経験をくぐり抜ける中で、雰囲気や表情も変わってくる。サリタもこの3年間で大きく変わっていた。無邪気な笑顔を振りまく子供から、4人きょうだいの長女としての自覚に目覚めた少女に変身していた。そして僕はかつて彼女の中にあった特別なオーラはどこかに消えてしまったことに気付いた。
サリタは9歳だけど、学校へは行っていない。1年間だけ通ったことがあるが、辞めてしまったという。妹二人と弟一人の面倒を母親だけで見るのは無理だということなのだろう。
「この子達は毎日を生きるだけで精一杯なんです。だからサリタは将来の夢なんて考えたことがないと思いますよ」とガイドが言った。
「夢なんて見ない方が幸せだってことですか?」 「そうですね。彼女にとってはそうかもしれません」
確かにネパールの山村の現実は厳しく、夢を抱くような余地は少ないのかもしれない。でも僕にはサリタが一度も夢を見たことがない子供だとはどうしても思えなかった。そんな子供があのような瞳の輝きを持つはずがない。 3年前のサリタが身につけていたオーラが消えてしまったのは、彼女が夢を見なくなったからなのだろうか。それでも彼女は幸せなのだろうか。僕は彼女に「将来の夢は何?」なんて聞くべきではなかったのだろうか。
答えが決して出ない疑問をいくつも抱えたまま、僕はサリタの家を後にした。
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