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カレン族の人々は老若男女を問わず、みんな竹で作ったパイプ煙草を吸う。
「煙草を吸い始めたのは14、5歳の頃」とマラソンランナーみたいに髪を短く刈ったおばさんが言う。「森の中に竹を取りに行ったときに吸い始めたんだよ。蚊は煙草の煙を嫌がるからね。煙草がどんな味かって? そんなの考えたことないよ」
村人の死亡原因のトップは今も昔もマラリアである。マラリア原虫は蚊を媒介して人に感染する。村人にとって蚊除けは生死に関わる問題なのだ。しかし最近では薬が手に入るようになったので、たとえ感染したとしても死ぬ確率は低くなったという。
「村人がマラリアよりも恐れているのは、町に出ることかもしれませんよ」と都会育ちのソーが言う。「彼らが町に出て仕事を見つけるのは、それほど難しくはないんです。賃金は安いけれど、この村で働くよりはずっといい収入になる。でも彼らは町に出た経験がないし、町のことをよく知らない。だから村を出たがらないんです」
僕は蚊によるマラリア感染を恐れ、ジャングルに時折出没するという熊を恐れる。しかしカレン族の人々にとって、そんなものよりも恐ろしいのは、生まれ育った村を出て町で暮らすことなのだ。
「人は未知なるものを恐れる」という言葉は真実なのだと僕は改めて思った。
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