柱の陰から (ネパール 2004)
 僕は旅先で職業を尋ねられたとき、時々「美少女写真家です」なんて冗談めかして言っていたのだけど、ネパールを歩き始めてからは正真正銘の美少女専門写真家になってしまった。他の被写体の存在を忘れてしまうほどネパールの少女達は美しかった。その瞳の輝きに吸い寄せられるように、僕は毎日少女を撮り歩いた。
 もちろんネパールの山村に住む少女達は写真を撮られることに慣れてはいない。きっと一眼レフカメラを向けられた経験なんて今までに一度もないだろう。それなのに妙な外国人が突然現れてカメラを構えても、恥ずかしがって逃げ回るわけでもなく、無理に笑顔を作るわけでもなく、ありのままの自然な表情で見つめ返してくる。
 その傾向は美しい女の子ほど顕著だったように思う。美少女はいつも堂々としていて、決して物怖じしない。彼女達は自然に「美しさの自覚」とでも言うべきものを身につけているのだ。