棚田の緑 (ネパール 2004)
 雨期を迎える直前に、ネパールの棚田は新しい稲を植えられて若々しい緑に覆われる。
 この棚田が膨大な時間をかけて作られたものであることは、あぜの部分に積み上げられた石垣を見ればわかる。雨で土砂が流失するのを防ぐために、ひとつひとつ人の手で積み上げられていったのだろう。アバウトに見えて、とても綿密な作業が行われている。
 傾斜の急な場所では、わずか1mの幅しかないような本当に猫の額みたいに狭い畑もあるのだが、そんな畑にも水牛が入って土を耕して、作物を植える準備をしていた。ここには無駄にできる土地なんてないのだ。
 削げる部分を全て削ぎ落とした後に残るかたち。シンプルで力強く、一切の無駄を排した美しさがネパールの棚田にはあった。