片道2時間のハイスクール (ネパール 2004)
 ネパールの山村の教育事情はあまり良くない。小学校はほとんどの村にひとつはあるのだけど、その上のハイスクールとなるとその数はとても少ない。だから片道2時間もの道のりを毎日歩いてハイスクールに通う生徒も珍しくないという。
 フルカルカという村にあるハイスクールを訪ねた。さほど広くない教室の中に100人ほどの生徒がぎっしりと詰め込まれている過密状態だったが、生徒達は真剣な眼差しで授業に集中していた。やりたい放題という感じだった小学校とは雰囲気がまるで違っている。中途半端な気持ちの子供は、わざわざ片道2時間かけて通おうとはしないのだろう。
 教室には顔つきが全く違う子供達が隣り合って座っていた。日本人とそっくりの顔したモンゴロイド系の子供と、彫りの深いインド系の子供である。民族や宗教が違うとはいえ、長い間すぐ近くに住んでいる人々が混じり合うことなく暮らしてきたのは、カースト制度の強い影響があるためだという。今ではカーストによる差別は公には否定されているけれど、異なるカーストに属する男女が結婚する例は極めて少ないのが現実なのだ。
「しばらくすれば、それも変わると思いますよ」と理科を教えている先生が僕に言った。「子供達はカーストに関係なく同じ教室で勉強しているし、宗教に関係なく友達になります。その彼らが恋愛し、結婚したいと思うようになるのは、自然の成り行きじゃないでしょうか」