愛しの弟 (ベトナム 2001)
 ベトナムは僕にとって初めてのアジアだった。それなのに、この国に来てからずっと「懐かしさ」を感じていた。水牛がのっそりと歩く水田も、女達の声が響 き合う市場も、子供達の笑顔も、初めて目にするはずなのに、ずっと前から知っているような気がした。
 ベトナムの風景には、僕の心を揺さぶる色が含まれていた。ベトナムの空気には、僕の記憶を刺激する匂いが含まれていた。ベトナム人の笑顔には、見ている こちらも笑い出さずにはいられなくなるような温かさが含まれていた。
 僕の旅はここから始まった。そしてこのような懐かしい土地を探して、僕はユーラシア大陸を彷徨い歩くことになった。