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 ガイドブックなどを読むと、盗難などのトラブルに巻き込まれた話ばかりで怖いです。実際はどうなんでしょうか?

 例えば100人に1人がひったくりに襲われて、カメラと財布を奪われたとします。それが数万もの人が訪れる観光地であれば、被害は百人単位になって、「あそこは絶対に危険だ」という話ばかり聞かれることになります。ひどい目に遭った旅行者は、そのことを出会う人一人一人に話したくなるものなんですね。
 もちろん、詐欺師やスリの手口を事前に仕入れていくことも重要です。そうすれば未然に防げるものも結構ありますから。でも、その話を恐れてばかりいると、どこへも行けなくなってしまいますから、適当に聞き流すことも必要です。実際に、僕が行った国の中で「話に聞いていたより治安が悪いな」と思ったところは、ひとつもありませんでした。
 万が一、被害に遭ってしまったら、「運が悪かった」と諦めるのも、前向きな考え方です。自分を責めても仕方がないですからね。どこにも悪い人間はいるものです。
 一般にイスラムの国や仏教国は安全度が高く、ヨーロッパも西に行くほど治安が悪化する傾向があるようです。どちらにしても、日本より治安がいいという国は、ほとんどありませんが。




 私(22歳OL)もいつか一人旅をしたいと思うのですが、なかなか最初の一歩が踏み出せません。女の一人旅は、やはり危険なのでしょうか?

 結局のところ、旅は自己責任の元で行うものだと思います。誰かが「安全だ」と太鼓判を押したとしても、それについて誰かが責任を取ってくれるわけではありませんよね。
 ただひとつ言えることは、世界には予想以上にたくさんの女性バックパッカーで溢れている、しかもその多くは日本人である、という事実です。これには僕も驚きました。ごく普通の小さな日本人女性が、「アフリカを一年旅しているんですよ」とさらっと言ってのけたりするのです。
 そして、一人旅の女性は自然体で、旅を楽しんでいる人が多いように思いました。往々にして男性旅行者というのは、「バックパッカーはかくあるべし」という気負いでもって、自分自身を縛っているようなところがありますから。
 また、ベトナム、トルコあたりは、日本人女性にとても人気のある国です。ここから一人旅をスタートさせたという旅行者も多いようです。




 旅の移動手段は何ですか?飛行機?鉄道?バス?

 僕の場合は主にバスでした。特定の地域(中国、ロシア、インド)を除いて、どの国も鉄道は斜陽なのです。長距離、大量輸送という需要があまり無い国では、設備投資が少なくて小回りの利くバスにかなわないんですね。鉄道網の発達という点で、日本という国は例外であるということがよくわかります。
 それにしてもバスはしんどい。ある意味で苦行です。慣れてしまえば、一日8時間移動でも苦にならなくなるのですが、それでも我慢強さが必要です。「エコノミークラス症候群だ」などと言っている人には無理かもしれません。アジアのバスの場合は、何時間もトイレ休憩なしにぶっ続けで走ることも珍しくないですから、トイレが近い人には、あまりお勧めできません。
 アジアのバスで一番辛いこと。これは様々な旅行記にも書かれていますが音楽です。とにかく、どの国のバスドライバーも自国の音楽が大好きです。好きでいるならまだしも、大音量でバス中に響かせないと気が済まない。深夜だろうがお構いなし。というわけで、耳栓、またはヘッドホンステレオは、持っていった方が懸命でしょう。(2度目の旅にはiPodを持っていきました。これは大正解でした)
 徹底的に陸路にこだわる人は、もちろん飛行機を一切使わずに、ユーラシアを横断することは可能です。でも、僕はそこまでタイトなこだわりを持っていたわけではないので、何度か飛行機を使いました。また、ミャンマーは事実上陸路での越境が出来ないので注意が必要です。




 「たびそら」には、地図のことが書かれていないように思います。地図やガイドブックのような物には一切頼らないで、進んでいったのでしょうか?

 もちろん、僕もガイドブックに頼っていますし、地図を見て歩いてもいます。特に目的地が決まっている場合には、地図がないと非効率この上ないですから。
 でも、普通の町をぶらぶら歩くのに地図もガイドブックも必要ないし、役にも立ちません。行き当たりばったりに、路地を曲がって行く方が、いろいろと面白いことが起こるものですから。
 なかには「俺はガイドブックの類は一切持たないんだ」と決めているストロングスタイルの旅人もいるわけですが、別に僕はそこまでのこだわりは持ちません。便利だと思えばガイドブックを頼るし、逆に必要がなければ使わない。
 旅には「予定調和を楽しむ」という面と、「意外性を楽しむ」という面があると思うのです。片方だけでは、あまり面白くないですね。




 「たびそら」というタイトルにはどんな意味があるんですか?

 旅の半分はバスや列車での移動時間です。アジアの旅においては、移動はとことん疲れるものです。バスは思うように進まないし、列車は一日に一本しかなかったりする。座席は硬く、スピードは遅く、ひどく揺れる。ただ無意味に時間だけが過ぎ、苛立ちばかりが募ってくる。
 そんな苛立った心を落ち着かせてくれたのが、車窓から見える空でした。旅先で見る空は、そこでしか見られない独特の色をしています。世界はあくまでも広く、変化に富んでいる。そのことを旅の空は教えてくれるのです。
 そんなわけで、僕はこのサイトに「たびそら」という名前を付けたのです。




 撮影に使っているカメラとレンズを教えてください。

 僕は2001年の旅から、ずっと一眼レフデジタルカメラを使っています。そして、それから長い旅に出るたびにカメラを買えています。デジタルカメラというのは、それだけ製品サイクルの短いものなんですね。
 以下に、これまでの旅で使っていたカメラとレンズを書いておきます。ご参考までに。

・2001年 EOS-D30 (20-35mm/F3.5-4.5 , 50mm/F1.4 , 70-200mm/F4.0)
・2004年 EOS-10D (17-40mm/F4.0 , 50mm/F1.4)
・2005年 EOS-20D (17-40mm/F4.0 , 50mm/F1.4)
・2006年 EOS-5D (24-70mm/F2.8)
・2009年 EOS-5Dmark2 (24-70mm/F2.8 70-200mm/F4.0)
・2013年 EOS-5Dmark3 (24-105mm/F4.0 70-200mm/F4.0)



 バックパックの大きさはどのぐらいでしたか?

A.僕は今回が初めての海外旅行だったので、ガイドブックに「荷物はなるべく軽く。バックパックは40リットルで十分です」と書いてあるのを真に受けてしまったのですが、いざ旅に出てみると、40Lなんてちゃちなものを持っている長期旅行者は誰もいませんでした。たいていは60L、大きいのだと80Lを背負っている人もいました。
 でも、荷物というのは詰め込めば何とかなるもので、40Lでも十分に事足りたのでした。それ以来2006年までずっと同じ40Lを使い続けています。
 もっとも、僕の場合はノートPCやCD−Rドライブや充電器といった、あまり他の人が持ち歩かないものが入っていたので、小さいながらも重量的にはかなりボリュームがありました。
 現地で絶対に買えない貴重品以外は、たいてい日本よりも安く買えてしまうわけですから、何でもかんでもカバンに詰め込もうというのは考えものです。我々は「旅の荷物はスーツケース14個です」などとのたまう叶姉妹ではないんですから。




 旅にこれは持っていくべきだ、というものはありますか?

 「電子辞書」・・・英会話が得意という人なら必要ないですが、これはとても役に立ちます。最新の小さなものならば、ポケットに入れて持ち歩くこともできますから。
 「Ipod」・・・好きな音楽を旅先で聴くという目的以外に、アジアのバスで休みなく流され続ける(本当にうるさい)音楽から身を守るということにも使えます。これは耳栓でも代用ができますね。
 「日本のお土産」・・・旅をしていると、現地の人から親切にされて、何かお返しをしたいなと思うときが必ずあります。そんなときに、日本からのちょっとしたお土産をプレゼントすると、とても喜ばれます。僕は日本の絵はがきを持っていきました。これだとかさばらないし、日本という国を知ってもらうこともできます。


 これは持って行かなくてもいい、というものは?

 「安宿に泊まるけど、野宿するつもりもないし、寒い冬を僻地で過ごすつもりもない」という旅行者なら、寝袋は要りません。特に欧米人バックパッカーは、必ずと言っていいほど寝袋とスポンジ製の下敷きマットをバックパックに括り付けているのですが、彼ら全員が、野宿中心のワイルドな旅人というわけではないのです。たぶん「寝袋を持ってないのはバックパッカーじゃない」という一種の思い込みがあるのでしょう。
 寝袋はかさばるし、重量もあります。荷物が大きいと、移動するのが面倒になるし、絶え間ない移動を繰り返すスタイルの旅には不向きです。だから僕は持っていきませんでした。もちろん途中で必要になれば、現地で買うことも可能です。
 旅において、絶対に必要な荷物というのは、ほとんどないのかもしれません。僕が出会った中で一番荷物が小さかった旅人は、3年間歩いて世界を旅しているというチュニ ジアの男だったことからも、それは証明されているように思います。




 パソコンは何を持っていったのですか?

 2001年の旅で使ったのはカシオ製PC「カシオペアFIVA」というモデルです。当時、ウィンドウズ98が動く世界最小マシンを謳っていたノートPCです。ちょうどガイドブック「地球の歩き方」と同じサイズです。性能的にはたいしたことはありませんが、バイオのようなメジャーブランドではないので安かったのと、何よりも800gという軽さが魅力でした。2年半かけて世界一周をしているというご夫婦も同じパソコンを使っていました。どうやらこのパソコンは長い旅をする人間に向いたモデルのようなのですが、残念なことにそのようなニーズはあまりなく(当然ですね)、結局現在は販売されていません。

 2004年〜2006年の旅には、SONYのPCG-TR2Eというミニノートを持っていきました。FIVAに比べるとふた回りぐらい大きいのですが、CD-Rが内蔵されているのと、液晶ディスプレイが綺麗だというのが購入の理由です。しかし内蔵されているへぼいカメラは不要ですね。


 壊れませんか?

 僕が一番心配していたのも、まさにそれでした。もちろん普通にバックパックを背負って旅をしている限りは簡単に壊れることはありませんが、相手はアジアの悪路です。それも、カンボジアの穴ぼこだらけの国道や、北ラオスの山道、モンゴルの大草原といった、半端じゃないハードな道です。
 しかし今のところPCが壊れたことはありません。まぁラッキーだと言えるでしょう。もちろん万が一に備えて常にCD−RやDVD−Rなどのハードメディアにデーターのバックアップを取るようにはしていました。カメラやPCが壊れるのは仕方がない。けれど、撮った写真だけは何としても残しておきたいのです。




 旅に語学力は必要ですか?

 もちろん、英語は出来た方が何かと便利だし、さらに現地語ができるなら申し分ありません。でも実際のところ、アジアを旅する限りにおいては、英語はさほど役には立ちません。有名観光地や、インド、パキスタンなどでは、かなり英語も通用しますが、それ以外ではあまり使えないのです。
 じゃあ、どうするのか。これはもうボディーランゲージ・身振り手振りで伝えるしかありません。これが意外と通用するものだから、アジアを旅していても英語が上達するどころか、下手くそになって帰ってくるというのは、よくある話です。(実際に僕もそうでした)



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