質問:将来世界に出るために学ぶべきこと

いつも「たびそら」の更新を楽しみにしている、大学一年生の男子です。
自分は将来的に、何か世界を股にかけるような人生を送りたいと思っています。
それが具体的に何処でどういった仕事をして、結果的に何がしたいのかはまだ自分でも分からないのですが・・・
とにかく、世界に出たいんです笑!!!
大学を一年間休学して、自分の足で世界一周をする計画も立てています。
 
そこで世界の色々な国々をまわられた三井さんに質問なのですが、「将来世界に出るんだったら、ぜひ大学生のうちにコレは学んでおくべきだ!」と思うものはありますか?
大学の授業で学べるものに限らなくて結構ですので、三井さんの考えを聞かせて下さい。
 
 

三井の答え

 世界を股にかけるような人生。
 いいですね。ぜひ実現させてください。
 
 若いうちに学ぶべきことは何か。
 こういう質問を受けたときに、いつも「うーん」と考え込んでしまうのは、僕自身の学生生活がそれほど充実したものではなかったからです。
 
 すでに何度も書いていることですが、僕は26歳の時にはじめて日本の外に出かけました。それまではパスポートすら持っていなかったのです。大学生の頃に「海外を旅してみたい」と思ったことは一度もなかったのです。毎日をただ何となく過ごしていた。流されるまま怠惰な日常を送っていたのでした。大学を留年して半分パチプロの様なことをやっていたり・・・。まぁ不真面目な学生でした。
 
 ただ本を読むのは好きでした。正確に言えば、二十歳を超えたぐらいから意識的に多くの本を読むようになったのですが、そこで自分が知らなかった世界に出会ったというのが、後々の人生に大きな影響を与えたような気がします。
 
 読書というのはすぐに効き目があるものではありません。本当に良い本というのは、あとからじわじわと効いてくるものです。そして自分をゆっくりと変えてくれるものです。
 
 今はインターネット全盛の時代で、ブログやミクシィ日記やネットニュースを読んでいるだけで、「世の中こんなものだ」とわかった気になってしまいがちですが、その考え方はちょっと危険です。面倒くさくても、お金がかかっても、本には本にしかない良さがあります。時代を超えた普遍的な考え方とか、吟味を重ねた言葉の重みといったものが。
 
 というわけで、大学生の間にできるだけ多くの「良い本」に出会いましょうというのが、僕からのアドバイスです。
 

 それから、すごく基本的なことですが、やはりベーシックな英語力は身につけておいた方がいいだろうと思います。欧米に限らず、アジアでもアフリカでも、やはり国際コミュニケーションの基本となるのは英語ですから。
 
 僕だって、あらかじめ自分の将来がわかっていたなら、学生時代にもうちょっと真面目に英語の勉強に取り組んでいただろうと思います。旅人同士の会話でも「若いうちから英語をやっておくべきだった」という後悔の声がよく聞かれます。
 
 でも、普通の中学生や高校生が「将来の役に立つから」という明確な目的を持って英語に取り組むなんてことはあまりないのが、日本の実情ではないでしょうか。数学や化学や世界史と同じように「やれと言われているからやってんだけどさぁ・・」という受け身な態度で勉強している場合がほとんどだと思います。実際、外国人に道を聞かれたりしなければ、まず「英語を話す必要に迫られる」ってことはないですからね。
 
 これは英語に限ったことではないけれど、明確な目的意識がなければ、いくら勉強したところであまり身には付かないのです。逆に言えば、目的意識さえはっきりしていれば、それに向かって努力することはそれほど苦ではない。
 
 あなたの場合には、大学一年生の時点で「世界を股にかけるような人生を送りたい」という目的があるのだから、話は早い。その目的に向かって、着実に進んでいけばいいのです。
 
 ここで気をつけなければいけないのは、「英語はあくまでも手段であって、目的ではない」ということです。英語を身につけるために、アメリカやカナダに留学したり、オーストラリアやニュージーランドにワーキングホリデーに行くのもいいけれど、そこで英語を話せるようになったからといって、「目的を達成した」と勘違いしてはいけないということです。
 
 英語を使って何を実現させたいのか。その先の目的が定まっていないと、「英語は上手いけど中身のない話ばかりする人」になってしまいます。
 
 「手段の目的化」というのは、どの分野にもあることなので、注意しなければいけません。
 
 例えば写真家にとって「写真を上手く撮ること」は重要なスキルだけど、「上手いけれどつまらない作品を撮る人」も少なくありません。そういう人は「上手く撮ること」が目的化してしまって、「写真によって何を伝えたいのか」という本来の目的を忘れているのです。