数年前にベストセラーになった『「捨てる!」技術』という本をたまたま手に取ったので、読んでみました。
この本で強調しているのは、とにかく即断することです。「とりあえず置いておこう」とか、「何かの役に立つのでは」という気の迷いまでも、あっさりとゴミ箱行きにしなさいと言う。要するに捨てるための「技術」というより、捨てるための「心構え」を教えてくれる本なのです。
しかし、僕はこれらの「捨てる技術」にあまり新鮮さを感じませんでした。その大半が既に実践していることだったからです。僕は「これはいらないなぁ」と思ったら、すぐに捨てちゃいます。ほとんど未練は感じない。捨てるのって、少なくとも僕にとっては気持ちいいことなんですね。最近は、ほとんどモノを買わないから、捨てるものもなくて、「捨てることの快感」に飢えているぐらいなのです。
僕が捨てることにためらいを感じないのは、生来の性質だとは思うのですが、長く旅をすることによってそれが強化されたようにも思います。
小さなバックパックひとつに必要最低限の荷物を詰め込む、というのが僕の旅の基本です。わずか40Lのバックパックの中に入る量は限られているから、何でもかんでも持って行くわけにはいかない。梅宮アンナや叶姉妹のように何十個ものスーツケースに衣装やアクセサリーなんかを詰め込んで、ゴージャスな旅を満喫できる身分ではないのです。
僕の場合には、デジカメやパソコン関係の荷物が多いので、それ以外のモノはさらに削られることになります。防寒着は折り畳めるウィンドブレーカー、タオルは二枚、本なら文字密度の高い文庫本、という具合。
「結局、大切なものって命ぐらいだよね」
と気取るつもりはありませんが、失って困るものはあまりない。強いて挙げるなら、パソコンの中に収納されているデーター(文章や写真)ぐらいです。一度書いた文章や、一度撮った写真は、二度と再現しないですからね(だからバックアップにはとても気を遣います)。
旅をしていると、「自分にとって何が必要で、何が不要なのか」という「削ぎ落とし」をする習慣が自然と身に付きます。最近物欲がないのは、旅先の感覚が日本に帰ってからも続いているからなのかもしれません。
『「捨てる!」技術』の著者は、何度か引っ越しを繰り返すうちに必要なものと不要なものを選別することができるようになった、と書いています。それと同じようなことが、旅にも言えるのではないでしょうか。
自分にとって本当に必要なモノって、そんなに多くはありませんよね。だけど多くの人が、所有物であるはずのモノに振り回されてしまっている。
『「捨てる!」技術』には切り札的考え方として、こんなことが書かれています。
「あなたが死ねばみんなゴミなのだ」
その通り。僕らはもっとシンプルになるべきなのかもしれません。