質問:イヤな仕事を辞めて旅に出たい
何年も前から仕事を辞めたい辞めたいと思いながら辞められずにいます。
その理由は、やりたいことがない、スキルや自信もない、辞めたあとの生活の心配等々があるからです。
海外に一人で数日旅行をしたいと思っています。旅行を数年前からやっており、度々テレビで拝見する海外に興味をもち海外旅行をしてみたいと思うようになりました。
まだ漠然と目的は決まっていません。行きたい場所もまだわかりません。
しかし、何年も仕事のことで、悩んでそのくせなんの行動もせず、休日はほぼ部屋に閉じこもっています。
そんな生活を変えたい、自信をつけたい、自分の知らない世界をみてみたいとか刺激を受けたい(安易な考えかもしれませんが)と思っています。
数年前に東京へ旅行で訪れた時の感動や楽しさは今でも覚えています。だからといってそれが何かの役に立ったわけではありませんが、それ以前よりかは行動力等は変わった気がします。
海外にいって何かやりたいことが見つかるという保障はありませんし、隣の芝生みたいにただのあこがれなのかもしれません。次の仕事も見つけないまま旅行し、なにも見つからず落ち込んで帰ってくるかもしれません。
ですが、海外へ行ってどんな所なのか、頼りない決断力のない自分が一人でいけるのか試したい、なにも変わらず堂々巡りしている生活を変えたいという一心で旅行をしたいのですが、これって無謀でしょうか?
これだけの理由、目的のない状態ではやりたいことはおろか後悔するだけなのでしょうか?
三井の答え
まず最初にはっきりさせておくべきなのは、「仕事を辞めること」と「海外旅行に行く」ことのあいだには、何の関係もないということです。あなたが何のお仕事をされているのかわかりませんが、仕事を続けながら数日間休暇を取って海外旅行をすることは十分に可能なはずです(毎年、何百万人もの日本人がそうしていますから)。仕事と旅は両立できるものです。二者択一で考える必要はありません。
それはともかく、あなたは今の仕事を辞めたいんですよね。辞めたくて辞めたくて仕方がない。今やっている仕事がどうしても好きになれず、やりたくない仕事をだらだらと続けている自分のことも好きになれない。そんな毎日から逃避するための口実として「旅」を持ち出しているのです。旅に出れば、今の自分が変えられるかもしれない。嫌いな自分を好きになれるかもしれない。そういう漠然とした期待を、旅に対して抱いているのだと思います。
海外旅行が人生を一変させるような決定的な経験になるかどうかは、もちろん行く人次第ですが、その可能性はさほど高くはないと思います。「旅」や「外国」それ自体が、あなたを変えてくれるわけではないのです。あなたを変えられるのは、あなた自身です。もちろん「言葉さえ通じない異国」という環境が刺激になって、自分の中に眠っていた何か(たとえば意外な楽天性とか、積極的なコミュニケーション力など)が呼び覚まされるということはあるでしょう。しかしあくまでも旅はきっかけにすぎません。そのきっかけを生かすのも殺すのも、あなた次第なのです。
旅があなたの人生を変えてくれるかどうかはわかりません。それでも僕は、旅を「仕事を辞める口実」として使うことがダメだ、と言うつもりはありません。長い人生、ときには逃げることだって必要です。これまでの人生をいったんリセットして、何の目的もなく、ふらっと旅に出てみるというのも、悪くないアイデアだと思います。僕自身、初めて一人旅に出たときは、これといった将来の展望もなく、なんとなく日本を離れたわけですから。若かったし、無謀だった。深い考えなんてなかった。でも無謀な若者だったからこそ、あれほど思い切ったことができたのです。
あなたの中には「旅に出たい」という衝動が高まっている。「今の自分を変えたい」という願望がふつふつと湧いてきている。その心の声は大切にすべきです。旅に出るにせよ、出ないにせよ、このままやりたくない仕事をずるずると続けるのは、あなたにとってよくない。ムリに続けようとしても、おそらく体の方が「やめてくれ!」と悲鳴を上げるでしょう(既にそのサインは出ているのかもしれません)。
人は誰しも、自分の人生を自分の足で歩く権利を持っています。あなたのやり方で、あなたのペースで歩いていけばいいのです。「そんな歩き方はヘンだよ。普通じゃないよ」という人がいても、耳を貸す必要はありません。それがたとえ友人や家族からの言葉であっても。あなたはまず、自分の人生を自分の手に取り戻さなければいけません。
旅はあなたを変えるかもしれない。旅ではない別の何かが、あなたを変えるかもしれない。すべての可能性は開かれています。
歩き出しましょう。
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