インドは修理大国だ。モノを簡単に捨てたりせず、できるだけ長く使い続けるという思想は、街に様々な修理屋が軒を連ねていることからもうかがい知ることができる。インドではモノが貴重な時代が長く続いたので、新品を買うよりも修理代を払って長く使う方が得だったのだろう。しかし21世紀に入って、世界的に環境意識が高まる中で、インドで受け継がれてきた修理文化が「誇るべきサステイナブルな思想」として改めて見直されているようだ。
僕もインドでいろんなものを直してもらった。バイク関係はもちろんのこと、ズボンが破れたり、サンダルが壊れたりしたときも、町の修理屋さんに頼んで補修してもらった。腕は確かだし、仕事も早かった。
着慣れたもの、履き慣れたものを捨てるなんてもったいない。そう「もったいない」は日本だけの専売特許ではないのだ。
穴が開いたり破けたりした服でも、直して着続けるのがインド流だ。街角に店を構える修理屋に持っていけば、伝統服だろうがジーンズだろうが、ものの5分で直してくれる。その作業を興味津々の表情で見つめる少年は、将来この仕事に就くのだろうか?
インドではエアコンはまだまだ高級品なので、扇風機が暑い時期をやり過ごすのに欠かせない生活必需品だ。古い機械が故障しても、何度も修理して使い続けるのが当たり前だ。特に暑季が始まる3月には、修理屋さんは大忙しになる。
昔ながらの足踏み式ミシンを使うインド人は多い。構造がシンプルで壊れにくく、同じミシンを50年以上も使っている愛用者もいるほどだ。インドの街にはこのようなミシン専門の修理屋さんが必ずあって、部品を取り替えながら、長く長く使い続けている。
インドでも腕時計が貴重品だった時代は過去のものになったけど、今もお気に入りの時計を修理して使い続ける人は多い。時計修理屋さんのシンボルといえばこのルーペ。メガネと一体化していて、すごくカッコいい。
バイク大国インドには、バイク修理屋さんもたくさんある。街角の修理屋だと、50ルピー程度の安い値段で簡単な修理を行ってくれる。だからインドでは故障やパンクを気にせずに旅を続けることができる。壊れても、すぐ近くに修理屋があるからだ。
インド西部グジャラート州には、木製の漁船を作る造船所がいくつもある。組み立て方法は昔と変わらないが、今は内部にガラス繊維を貼って構造を強化しているという。以前は多かった海難事故も、大幅に減ったそうだ。
インドに住むムスリムの男が作っているのは「エアクーラー」。エアコンではなく、水を吸わせたヤシの繊維に扇風機で風を吹きかけ、気化熱を奪うことで室温を下げるという原始的な冷房装置だ。ブリキの板を叩いたり曲げたりして、手作りで組み立てていく様子も見ていて面白い。
インド北部ウッタルプラデシュ州にある刃物工場。グラインダーを使って包丁の刃先を研ぐ男の隣で、チャイを飲んで一服しているのは親方だ。何十年もこの仕事に打ち込んできた職人の風格が、外見ににじみ出ている。
インド北西部ラジャスタン州で作られていた「ティルパティ」というお菓子は、水飴にたっぷりゴマをまぶし、麺棒で平たく伸ばしてせんべい状にしたもの。香ばしいゴマの風味が口いっぱいに広がる逸品だ。
小麦粉を練った麺を油で揚げたスナックを作る職人。猛烈に暑いので下着姿で働いていた。インド人はいかにもカロリーのたかそうな揚げ物が大好きだが、この人はスリムな体型を維持していた。