銀座のキヤノンギャラリーで行われていた写真展「渋イケメンの国」は無事に全日程を終えました。日テレ「ZIP」などのメディアにも取り上げられたことあって、会期後半になるにしたがって来場者がどんどん増えました。
 このあと5月に梅田キヤノンギャラリーで、6月に福岡キヤノンギャラリーで巡回展が開催されます。(展示内容は銀座とまったく同じ。僕は会場には行きません。展示のみです)

 銀座という場所柄か、外国人のお客さんが多かったのが印象的でした。メキシコでウェディング・フォトグラファーをしている方や、40年前にインドを旅していたというドイツ人の女性など。観光目的で銀座をぶらぶらしていたら、たまたま目に付いた会場に入ってきたようです。

 

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 ドイツ人の女性が気に入ったイケメンは、車窓から顔を出すバングラデシュの男。「この人、ジェームス・ディーンにそっくりね」と言っていました。日本人には舘ひろし、ドイツ人にはジェームス・ディーンに見えるようです。

 

ba16-07350舘ひろしにもジェームス・ディーンにも似ているバングラ人の渋イケメン

 

 在日30年のバングラ人フォトジャーナリスト、ラハマンさんも来てくれました。
「日本に住んでるバングラ人の間では、あなた有名だよ」
 とのこと。僕が2010年にバングラデシュ製のリキシャで日本一周したことは、バングラ人コミュニティーの中で広く知られているらしいのです。あの旅は本当に大変だったけど、7年経った今でも語り草になっているというのは嬉しいことですね。

 

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 最終日には、写真家の都築響一さんにもお越しいただきました。写真集を「驚くほどまっとうにポジティブな人間賛歌」だと評してくださった都築さん。今回の展示にも「腹にガツンとくる」男たちの姿に見入っておられました。

 

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 インド好きの人、インドに住んでいたり、長く旅をした経験がある人も多かったです。
「インドに何年も住んでいたけど、こんなにイケメンが多い国だなんて考えたこともなかったです」
 とおっしゃる方もいました。もちろんインドで出会う人みんなが渋イケメンというわけではない。あのような存在感を放つことができるのは、何百人、何千人も撮った中で、ごく一部の人だけだと言ってもいいでしょう。だから楽しい。簡単に手に入るものではないからこそ、「渋イケメンさがし」はやりがいがあるのです。

「今度、インドを自転車で一周したいんです」
 という大学生の男の子が来てくれたので、僕からアドバイスできることを伝えました。インドを一周するためには1万5000キロほどの距離を走らなければいけないので、バイクでも3ヶ月、自転車だと6ヶ月は必要だろうということ。4月から9月の暑い時期は避けた方がいいということ。野宿は蚊が多くて大変だし、治安の面からもお勧めできないということ。

 彼はすでにインドで痛い目に遭っていました。去年初めてインドを訪れたとき、パスポート以外のすべての所持品を盗まれてしまったというのです。
「デリーに到着して、その日は空港で夜を明かしました。次の朝タクシーでホテルに移動しようとしたときに、バングラデシュ出身だと名乗る男が話しかけてきたんです。面倒見のいい親切な人だったので、しばらく話をしていたら、『これからお寺に行くから一緒に行こう』という話になった。それで二人でオートリキシャに乗って有名な寺院に向かったんです。その寺院はセキュリティーが厳しくて、入り口でカメラや荷物を全部預けなくちゃいけなかった。そこで、その男が『俺がバッグを預かってやるよ』と言うので、彼に荷物を全部預けて、僕だけがお寺の中に入ったんです。それで参拝を終えて外に出てみたら、荷物も一緒に彼が消えていたんです」

 「よくある話」と言えばそれまでだけど、まさか自分の身にそんなことが起こるとは考えていなかったのでしょう。ガイドブックのトラブル事例も、詐欺師の手口も「そういう人が実在して自分を騙そうとしている」という実感が伴わなければ役には立たない。
 インド初日にしてすべてを盗られた彼は、そのまま警察に直行して被害届を出し、警官に日本大使館まで送ってもらって、日本大使館から実家に連絡して、お金を送金してもらう手はずを整えて、三日後に日本に戻ってきたそうです。コルカタのマザーハウスでボランティアをするのが旅の目的だったのに、それも果たせないまま、失意のうちに帰国したのでした。
「今から考えれば、なんてバカな手口に引っかかったんだろうって思いますけど・・・」

 彼が偉いのは、こんなひどい目に遭わされたのに、「それでもインドのことは好きなんです」と言えるハートの強さです。普通だったら「インドなんて二度と行くかボケ!」と言いたくなるような状況なのに、彼は「今度はインドを自転車で一周してみたい」なんて言っている。すげぇなぁと思います。見上げた根性というか、転んでもただでは起きない性格なのでしょう。

 もちろんインドにも悪い人はいます。特に気をつけなければいけないのは「親切を装って近づいてくる悪い奴」です。特に観光地や都会にはこういう輩が本当に多い。観光地では親しげに近づいてくる人間はまず疑ってかかってもいいぐらいです。

 でも、そうではないインド人もたくさんいる。というか99%のインド人はとても親切だし、温かい心の持ち主です。もし彼が自転車でインドを旅することになれば、いや自転車でなくても観光地以外のローカルな場所を旅することができれば、インド人に対するイメージも大きく変わることでしょう。

 これから僕は「帰国報告会」の準備に取りかかります。
 年に一度、みなさんの前で旅の話、写真の話をたっぷりとする貴重な機会。
 しっかり準備をして、まずは5月6日の大阪に備えようと思います。
 

IMG_4909展示の撤収作業。額装された40点の写真は、これから大阪に運ばれます。