質問:写真家になるには

はじめまして。ブログを拝見しました。
私も実は写真家になりたいんです。
まだ中学生なので高価なカメラを持っているほどではないのですが。
今私が1番悩んでいることは、写真家になるには大学とかも写真に関係のある大学に通った方が良いのだろうか?
です。私は、フランスの方の風景や人々を撮りたいのです。
しかし裕福な家に生まれたわけでもありませんし、頭だってそんなによくはないんです。
写真家になるにはやっぱり資格とか経歴とか関係してくるんでしょうか・・・?
よろしくお願いします。
 
 

三井の答え

 写真家になるために、資格は一切必要ありません。
 あなたがカメラを持っていて、シャッターを切ることができ、撮った写真を多くの人に見てもらえるのなら、あなたはすでに「写真家」なのです。
 
 つまり「写真家」という呼び名は、「画家」や「音楽家」や「評論家」と同じように自己申告制なのです。「写真家」を名乗るために必要な資格(たとえば「一級建築士」とか「司法書士」など)はありません。もちろん「日本写真家協会」に代表されるような業界団体はありますが、そこに所属していない写真家(僕もそうです)だってたくさんいます。
 
 写真を使って何かを表現しようとする人は、すべて写真家である――まず、これを頭に置いておきましょう。
 
 ようするに「写真家」になりたい人は、誰だって「写真家」を名乗ることができるのです。だから、極端な話、中学生のあなただって、もうすでに「写真家」なのです。
 
 でも世の中で「写真家」と呼ばれている人は、ただ単に自らそう名乗っているだけではなく、他人からもそう呼ばれています。荒木経惟、篠山紀信、星野道夫といった名前は、あなたもきっとご存じでしょう。
 
 もし、あなたが「写真家」だと名乗ったとしても、あなた以外誰一人としてそのことを認めなかったら、それは「(自称)写真家」というカッコ付きで呼ばれることになります。
 
 つまり「写真家」という呼称は、他人からそれを認められなければ、あまり意味をなさないのです。その点が、国家資格である「一級建築士」や「司法書士」とは違うところです。「会社員」だって、どこかの会社で働いていれば自動的に与えられる呼び名です。「(自称)会社員」だなんて、変ですよね。
 
 僕が言いたいのはこういう事です。
 大学で写真を勉強した人間であっても、まったく独学で写真を撮ってきた人間であっても、「写真家」を名乗りたければいつでも名乗ることができる。門戸は開かれている。でも、「自分が名乗る」ということと、「他人が認める」ということの間には、とても深い溝がある。そして、その深い溝を乗り越えて、プロの写真家となるためには、才能とか努力とか運とかが必要になってくるのです。
 

 プロの写真家になるために、美術大学や写真専門学校に通った方がいいのか。
 
 これはとても難しい質問です。なぜなら僕自身がそういうルートを通ってこなかったからです。大学は工学部だし、最初に就職したのも機械メーカーでした。26歳になるまで、写真とはまったく縁のない生活を送っていたのです。
 
 そんな僕がふとしたきっかけで写真の道に入り込むことになって、今ではそれを仕事にしている。「人生というのはなんて面白いものだろう。なんて不確かなものなんだろう」と思いますね。
 
 知り合いにも、僕と同じように学校で学んだことのない写真家もいますし、芸大を出た写真家もいます。いろいろです。学校に行ってもいいし、行かなくてもいい。それはあなた自身が選べばいい。僕はそう思います。
 
 でも、あなたには「フランスの風景を撮りたい」という目的があるんですよね。それだったら、まずはせっせとアルバイトをしてお金を貯めて、両親の承諾を取り付けた上でフランスを旅してみるというのが、最初のステップにふさわしいのではないでしょうか。
 
 ヨーロッパを旅するのはアジアよりもいくぶんお金がかかりますが、「裕福な家に生まれた」人でなければ行けないなんてことはありません。2~30万円ぐらいあれば十分じゃないでしょうか。それなら貯められるでしょ?
 
 時給800円×4時間のアルバイトを週3回。それを半年も続ければ貯められる額です。ね、できそうでしょ?
 
 1週間でも2週間でもいいから、撮りたいと思う土地を自分の足で歩いてみる。その風景を自分の目でしっかりと見つめる。それはきっと写真学校に通うよりもずっと大きなものを、あなたに与えてくれるはずです。
 
 もちろんいい写真を撮るためには、ある程度専門的な知識も必要です。そのために学校に通うのも、ひとつの手です。でも人間って自分が本当に関心のある対象にしか、「学びたい」という意欲をかきたてられないんです。ただ漠然と「教えてもらおう」という受け身の意識で学校に行っても、知識ってのは吸収できないものなんです。
 
 目的を持つというのは素晴らしいことです。
 自分が本当にしたいこと、打ち込めることを見つけることができれば、人は自分でも驚くほど努力をするし、自分を高めることができるものです。
 お互いに頑張りましょう。