田植えというのは女がするものという常識がある。それは僕が旅をしてきたアジアの国ほとんど全てに当てはまることだった。
男が働いていないわけではないが、水牛を引いて田んぼを耕したり、スコップで田んぼをならしたりといった建設作業的な仕事をしていることが多い。田んぼに稲を植える根気のいるきつい作業は女のものなのである。
ところがフィリピンでは男たちも田植えをするのである。昔からそうだったのか、あるいは近年になって変わったのかはわからないのだが、僕はその理由の一端が「女性の出稼ぎ労働」にあるのではないかと睨んでいる。
フィリピンの農村には、外国へ出稼ぎに行く労働者が多いのだが、その多くが女性なのである。男は故郷の田んぼを守り、女は外で働く。
ネパールやスリランカなどだとまったく逆の現象が起こるのだが、これがフィリピンの特徴なのである。