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ムラボーの町は完全な廃墟と化していたけれど、その周囲に広がる町や村は意外にも活気に満ちていた。復興のための人手は、どうにも手が付けられないムラボー市街ではなく、復興の見通しが立ちやすい周辺の村々に集中しているようだった。
復興現場には額に汗しながら陽気に働く人々の姿があった。ある川では、津波によってなぎ倒され、流れをせき止めている椰子の大木を、十人ほどの男が力を合わせて引っ張る姿があった。「一、二、三、それ!」と掛け声をかけ、綱引きの要領で一斉に引っ張る。しかし椰子の木は予想以上に重く、何度引っ張ってもびくともしない。それでも諦めずに引っ張っていると、先っぽだけがすぽっと抜けてしまい、その勢いでみんなが尻もちをついてしまう。泥の中に腰まで浸かった男達からは大きな笑い声が起こる。まるで子供の頃に絵本で読んだ「おおきなかぶ」の一場面のような光景に、僕も思わず吹き出してしまった。
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