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ルーマニア北部の田舎町で、月に一度立つという家畜市に出かけた。
野球場ぐらいある広場に、地元の農民達が持ち寄った馬や牛や豚が何百頭も集められていた。仲買人などは存在せず、売り手と買い手の直談判で取引する原始的な市場だった。
その中に、子馬を売りに来ている親子がいた。娘は子馬のことを自分のきょうだいのように感じているらしく、愛おしそうに頬をすり寄せたり、たてがみを撫でてやったり、鼻面にキスをしたりしていた。
でも、この子馬はあくまでも売り物で、買い手が見つかれば少女の元を去っていく運命にある。彼女もそのことは十分に承知しているのだろう。子馬を見つめる少女の眼差しは、どこか悲しげだった。
少女は子馬の頭をぎゅっと引き寄せて、耳元に何かを囁いた。ルーマニア語がわからない僕にも、それが別れの言葉だということは伝わってきた。 |
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