谷に響く歌声 (モロッコ 2005)
 モロッコ中部のアトラス山脈。住む人もほとんどいない人里離れた山奥を歩いていると、遠くから女達の歌声が響いてきた。彼女達は山から取ってきたらしい針葉樹の枝をたくさん背負っていた。
 雨が少なく樹木の少ないこの地方では、燃料用の薪の確保も丸一日がかりの重労働なのだという。背負った木々の重さは、女達の大きく曲がった腰からも見て取れる。彼女達はその重みを忘れるために歌を唄うのだろうか。
 深い峡谷に反響した7人のハーモニーは、まるで教会音楽のように幻想的だった。