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インド人はお祭り好きである。「インドでは一年中祭りが開かれている」という言い方もあるぐらいで、実際ほぼ毎日のように何かの祭りに遭遇した。
アンドラ・プラデシュ州東部にあるチララという町で行われていた祭りは、なかなかユニークだった。
はじまりはごく普通だった。景気づけのロケット花火がぼんぼんと打ち上がり、生バンドによる演奏が行われ、伝統舞踊「サームガラディ」が披露された。サームガラディは新体操のリボンの演技とマーシャルアーツをミックスしたような不思議なダンスで、見応えがあったが、なかなか見応えがあった。
そのあとに現れたのは、棒状の蛍光灯を手にした男たちだった。電極の近くが黒ずんでいるから、もう使えない廃品なのだろう。彼らは一人の男を中心に立たせて、それを取り囲むように輪になった。中心にいる男は仰向けに寝転がり、両手両足を地面に着けて体を反らす「ブリッジ」の体勢を取った。
いったい何が始まるのだろう。観衆が固唾を飲んで見守る中、「うりゃー!」という掛け声と共に、蛍光灯が振り上げられた。振り下ろした先は、ブリッジをする男の腹の上だった。スイカ割りの要領で叩きつけられた蛍光灯は、その衝撃で粉みじんに砕け、あたり一面に白い破片を飛び散らした。見るからに痛そうである。しかしブリッジの男は全く動じない。この程度の打撃など効くわけがない、というそぶりなのだ。
そのあとも古い蛍光灯による攻撃は何度も繰り返された。腹だけでなく、頭や胸にも蛍光灯が振り下ろされた。用意された20本ほどの蛍光灯が全て粉々になると、ようやく儀式は終わった。
集まった観客の一人に話を聞いてみると、この祭りは新しい寺院の建立を祝う目的で行われているとのことだった。
「お寺に新しい神様を迎えるときには、昔からこういう儀式をするんです」と彼は言う。
花火や音楽や演舞といったパフォーマンスが古来より神に捧げられてきたというのは理解できる。しかし、あの「蛍光灯割り」はどう考えても「昔から」行われていたものではあるまい。インドで蛍光灯が普及してだしてから、まだ20年ぐらいしか経っていないだろうから。
それにしても、いったい誰が「古い蛍光灯を叩き割ってやろう」なんてことを思い付いたのだろう。天才というか馬鹿というか、過激な発想力を持つ先駆者が「これは使える!」と閃いたのだろうか。そしてそのアイデアをさっそく実行に移してみて気付いたのだ。破片が派手に飛び散って迫力があるし、そのわりに叩かれた方の痛みはそれほどでもない(?)ということに。しかも廃品を使うからコストも安い。おぉこれは素晴らしいってことで、たちまちインド各地に広まっていったのではないか、というのが僕の推測である。
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