ネパールに入国した事情
インドビザのややこしい事情で、いったん国境を超えてネパールに入国した。インド観光ビザに「1回の滞在は90日以内」という新しい縛りができたから。これまでは6ヶ月滞在できるマルチビザだったのに、去年から東京のインド大使館発行のビザには90日縛りが付いたのだ。
出国予定は3月31日なので、このままだと10日あまりオーバーステイすることになる。その場合どうなるのか。空港のイミグレで軽い罰金で済むだとか、賄賂を払わなくちゃいけないとか、ブラックリストに載るだとか、いろんな情報が錯綜していて、本当のところはよくわからない。
どうせウッタルプラデシュ州北部を旅しているんだし、ちょっと走ればネパール国境だし、すぐにインドに戻ってくればいいや、という軽い気持ちで国境を越えたら、「24時間は戻ってこられない」というこれまた謎のルールにより、ネパール側のマヘンドラナガールにて一夜を過ごすことになった。
マヘンドラナガールはいいところだった。なんとなく辺境の小汚い街を想像していたけど、全然違った。インドよりもはるかに静かだし、清潔だし、動物のウンチも落ちていないし、人も優しい。いい感じのホテルもある。でも面白い街ではない。写真に撮りたいものもない。
翌日、大急ぎでデリーに向かう。巨大都市の渋滞にはまり、複雑怪奇な道路網に迷い、デリーに到着したのは夜9時になってしまった。グーグルマップが事前に予測した通りだった。到着時間予測の正確さには毎度驚かされる。予測不能なはずのインドの道路事情(工事・事故・路上での口論!等による渋滞)を踏まえて、正確な所要時間を予測できるのは、ビッグデータをおかげだろう。個人の振る舞いはランダムでも、それが何百万と集まれば傾向が生まれる。
翌日、デリーで講演会を行い、それからバラナシへ移動した。今年で三回目となるバラナシ撮影ツアーを行うためだ。バラナシでは天候にも恵まれ、10名の参加者のみなさんに摩訶不思議なインドの魅力にどっぷりと浸かっていただいた。とても充実した3日間になった。
デリー講演会&バラナシ撮影ツアーという二つの仕事が終わり、あとはゴールに向かうだけ。インドをバイクで一周する旅も、残すところあと10日になった。いよいよラストスパートだ。これから本格的な暑さを迎える内陸を走り抜けて、ゴールのオリッサ州プリーに向かう。
インド女性のとびっきりの笑顔
「僕にしか撮れないし、僕が撮るべきだ」と腹の底から思えるような被写体に出会うために、インドの辺鄙な場所を旅している。「この人に出会えただけで満足だ」という手応えを積み重ねることが、長い旅を続ける原動力になっている。あなたに会えて、よかった。
インド中西部マハラシュトラ州の農村で出会った若い女性。美しいサリー姿を夕陽が照らし出していた。
レンガ工場で働く少女。笑顔が降ってくる。そんな表現がぴったりくるような、まぶしい笑顔だった。
インド北西部ラジャスタン州の市場で出会った少女の笑顔。瞳の輝きと白い歯。力強い笑顔を向けてくれた。
インド北西部ラジャスタン州にあるジャイナ教の寺院で出会った少女。はにかんだ笑顔が素敵だった。
バラナシ近郊の村で出会った少女の笑顔。吸い込まれるような大きな瞳がキラキラと輝いていた。
インド中西部マハラシュトラ州の農村で出会った猫を抱く少女。インドでは猫は不吉な動物とされていて見かけることが少ないが、この村には野良猫が多かった。抱っこされた猫はちょっと迷惑そうだったけど。
インド西部グジャラート州で出会ったおばあさんの笑顔。窓枠に腰を下ろして、近所の人と世間話をしているところにカメラを向けた。
インド北西部ラジャスタン州で出会った笑顔のおばあさん。歯があらかた抜けてしまった口を大きく開けて、楽しそうに笑っていた。
女性だけのプジャを終えて、寺院から出てきた人々。歌って踊る儀式を終えた充実感が、おばあさんを笑顔にしている。
インド西部グジャラート州で出会った女性の笑顔。グジャラートの農村に住む女たちは大きな耳飾りをつけ、首や腕に入れ墨を施すのが伝統スタイルだ。
インドで女装して街を歩く「ヒジュラ」に出会った。男性でも女性でもないトランスジェンダーのヒジュラたちは、踊ったり騒いだりして街の人からお金をもらって生活している。「まんま男じゃん」というヒジュラも多い中、彼女は濃厚な「女らしさ」を漂わせ、長い髪を揺らせながら笑顔を振りまいていた。