青森で昭和レトロを感じる
去年から「料理通信」という雑誌で連載ページを担当しています。80歳を超えても現役で働き続ける人々の姿を追った「生涯現役」という企画で、今回取り上げたのは青森県のおばあちゃん二人。その取材のために青森に行ってきました。
青森を訪れるのは、2010年に「リキシャで日本一周」したとき以来。あのときは八戸からフェリーで北海道の苫小牧に渡り、日本最北端の宗谷岬を訪れた後、リキシャが壊れて走れなくなるというトラブルを乗り越えて函館から青森に渡り、リキシャを修理して再び出発するという、波乱に満ちた日々を送っていたのでした。いやぁ、あれは大変だった。
青森駅の周辺は、県庁所在地の中心地でありながら、あまり人が歩いていません。完全に車社会だし、駅前に商業施設を建てても人が集まらない。みんな郊外のイオンに買い物に行くんだとか。
青森港にはかつて青森と函館を結んだ青函連絡船「八甲田丸」がメモリアルシップとして係留されていました。青函連絡船は青函連絡船は1988年まで80年間にわたり、青森港と函館港を結び、1億6000万人の乗客を運んだそうです。名曲「津軽海峡冬景色」の世界ですね。
青森市は寂れ具合が素敵でした。町のあちこちに昭和を感じさせる家や店や看板があって、それが実にいい味わいを醸し出しているのです。場末感あふれるスナック街や、何十年も前から変わらない風情の小料理屋などがそこかしこに残っていて、昭和レトロ好きにはたまらない町歩きになりました。
青森には「オレンジ・ハート」というローカル・コンビニがあります。外見は他のコンビニチェーンと大差ないんだけど、なぜか店内には「いけす」があって、近くの海で捕れた新鮮なホタテを売っているのです。おにぎりは手作りで、不揃いだけど美味しい。画一的な大手コンビニとは一線を画す、ハートフルなコンビニなのです。
菜の花畑は地上の楽園
下北半島の横浜町には菜の花畑が広がっていました。鮮やかな黄色い絨毯がどこまでも続く風景は、地上のものとは思えない美しさ。菜種油を絞るために作付けされた菜の花畑は、インド北西部パンジャブ州にもあって、ちょっと懐かしかったです。それにしても、なんという黄色!
ちなみに毎年5月の第三土日には、横浜町で「菜の花フェスティバル」が開催されるそうです。風力発電の風車を背景にした菜の花絨毯は、まさに今が見頃を迎えています。
本州最北端の地・大間崎へ
大間崎は本州最北端の地。晴れていれば、17km先に北海道の大地が見えるということですが、この日はあいにくの曇天で、高い波と空に舞うウミネコしか見えませんでした。
大間崎はマグロ漁港として有名で、400kgを超える大物が釣れたという記録があるそうです。あまりにも風が強く、海が大しけだったので、漁船はみんな港に待機していましたが、とれたての新鮮な魚貝をいただきました。
ランチはウニ丼。ご飯が見えなくなるほどウニがぎっしりのってなんと1000円。とろけるような甘いウニでした。シーズンである3月から6月しか食べられない期間限定グルメだそうです。
大間崎はタコも名物。捕れたばかりのタコを軒先に吊して干物にしています。地元の人はタコの頭を好んで食べるんだとか。下着を干すみたいな感覚でタコが風に揺れているのが、なかなかシュールでした。
五所川原市では、陶芸体験ができるレストランでお昼(牛カルビ定食)を食べ、前衛的な作家が作った陶芸作品を見学しました。
古代のビーナス的なふくよかな女性像。
北前船を復元した大きな木造船が港に展示されていました。
青森県は温泉が豊富。下風呂温泉は古くから湯治場として栄えていた温泉街。漁師さんが冷えた体を温めに来ることから、公衆浴場のお湯は超アツアツなんだとか。
青森市内の居酒屋で、名物の貝みそをいただく。ホタテ貝の貝柱を卵でとじたもの。味は親子丼の海鮮風味。これは超うまいです。青森は海鮮がとにかく美味しいところでした。