インドの男は渋すぎる。白いヒゲも、白い眉毛も、白髪も、白いシャツも。すべて白で統一されたファッショナブルな老人が路地裏に座っていた。わざとらしさが全くなくて、ごく自然に座っていたのがカッコ良かった。本物のオシャレって、こういうことだよね。
積み上げられた荷物の上に座って、安い煙草ビリーで一服する男。1本1円ほどで買えるビリーは、今でもインドのおっさんたちに熱く支持されている。
インド北西部ラジャスタン州で、チャラスを吸う男。チャラスは大麻樹脂のことで、飲酒のタブーが強いインド人にとってお酒よりも馴染み深い嗜好品だ。仕事の後にちょっと一服、なんて感じでチャラスを吸う姿をよく見かける。大麻の所持が重大犯罪としてニュースになる日本とは、ずいぶん状況が違う。
インドの男は渋すぎる。ラジャスタン州の街角でチャイを作る男の真剣な眼差し。使い古した鍋にミルクと茶葉と砂糖を放り込んで、豪快に煮立てて作るチャイは、渋みと甘みがガツンと効いたパンチのある味だ。
「ほうきはいらんかねぇ」と叫びながら街を歩く行商人。インドの街角には実に様々なものを売り歩く行商人たちがいる。ほうきの需要なんてそれほど多くはないだろうが、一応食っていけるだけの収入にはなるようだ。
インドの寺院には独特の空気が流れている。参拝に訪れているのか、単に涼みに来ているのかわからない老人たちが、ひんやりとした石造りの廊下に座り込んで、日がな一日のんびりと過ごす。時間はあくまでもゆっくりと流れている。
何気ない仕草や表情が絵になるのがインドという国だ。壁に描かれた神様は古びて一部が剥がれ落ちている。その隣に立つ男は何を見ているのだろう?
独特のタッチで描かれた肖像画に見守られながらミカンを売る男。インドの街には味わい深い広告や落書きが溢れていて、なかなかのカオスだ。
インドで商売を始めるのは簡単だ。古びた台車と売り物を手に入れて、人通りの多そうな場所に陣取ればいい。でも誰かが新しい商売で成功したら、すぐに二匹目三匹目のドジョウが現れるから、大儲けは難しい。結果的に、路上に並ぶのは似たり寄ったりの商品になってしまう。