「日経ナショナルジオグラフィック写真賞2018」で僕の作品がグランプリを受賞しました
 ドキュメンタリー写真家として大きな目標にしていた賞なので、本当に嬉しいです。

 ナショジオ写真賞の趣旨は「国際的に活躍できるドキュメンタリー写真家を発掘すること」。これから日本のみならず世界中の人々にも作品を発信し、メッセージを伝えていくために、より力強く奥行きのある写真を撮っていきたい。そんな決意を新たにしました。

 2月4日には東京で授賞式が行われるので、急遽インドの旅を中断して一時帰国します。つかの間の日本を味わった後(きっと寒いんだろうけど)、1週間後にはインドに戻って旅を続ける予定です。

 

 

Our Land 〜残されたロヒンギャの日常〜

 

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 今回受賞した作品は、ミャンマー西部ラカイン州に住むロヒンギャの人々を撮った5枚組の写真「Our Land 〜残されたロヒンギャの日常〜」です。僕がロヒンギャの人々に初めて出会ったのは、2016年11月のこと。それから3年連続でこの地域を訪れ、そこで生きる人々の姿を撮影してきました。

 この3年のあいだに、ロヒンギャを取り巻く環境は激変しました。2017年8月25日にロヒンギャの人々とミャンマー政府軍とのあいだで大規模な衝突が発生し、軍による虐殺と焼き討ちによって、70万を超える人々が難民となり、隣国バングラデシュへ逃げ延びるという悲惨な出来事が起こったのです。それから1年半が経過した今もなお、劣悪な難民キャンプで暮らす人々が故郷の村に帰還する目処はまったく立っていません。

 その一方で、今もなおミャンマー国内にとどまって暮らすロヒンギャたちもいます。彼らは直接的な暴力には晒されてはいないものの、無国籍の状態に置かれ、市民権を奪われているので、村の外に出ることすら許されていません。現金収入を得られる職はなく、村には電気すら通っていない状態なのです。

 移動の自由を奪われ、差別的な境遇に苦しみながらも、ロヒンギャの村人は生きるために懸命に働いていました。牛に鋤を引かせて畑を耕し、川に網を投げて小魚を捕る。農業機械を買う余裕などないので、すべては人力と畜力に頼った昔ながらの農法です。

「父も祖父も、この土を耕してきたんだ」とクワを持った村人は言いました。「そして子や孫たちも、この土を耕し、種をまくだろう。ここは私たちの故郷だから。誰に何を言われても、離れるつもりはない」

 過酷な状況にあっても誇りを失わず、最後まで守るべきもの——故郷の土——を耕し、種をまく人々。その姿に僕は胸を打たれました。

 今回の写真賞受賞をきっかけにして、一人でも多くの方にロヒンギャ問題について知ってほしいと思っています。そして、彼らが逆境に屈することなく力強く生き抜いている姿から何かを感じてもらえることを願っています。

 

 

これまでのロヒンギャに関する投稿をまとめました

 僕は2016年からロヒンギャの村を訪れ、差別と迫害に苦しみながら、それでもなお強く生き抜く人々の姿を撮ってきました。この3年間のロヒンギャに関するブログ投稿6本をまとめましたので、ぜひご覧ください。

 

ロヒンギャ・それでも彼らは種をまく

 

ロヒンギャの村を訪ねる

 

ロヒンギャの大地を撮る

 

ロヒンギャの子供たち

 

ロヒンギャの暮らしを撮る

 

ロヒンギャの子供たちを撮る