去年の11月から続く長い旅も、残り1ヶ月を切った。これからインド北部パンジャブ州を経て、ウッタルプラデシュ州バラナシへと向かう。
長い旅を成功させるコツは「足を止めないこと」にある。上手く行っているときはさらに前進し、上手く行かないときにもとにかく進み続ける。一定のリズムを刻みながら前に進んでいれば、必ずその先に思いがけない展開や意外な出会いが待っている。迷いは停滞を生み、停滞は好奇心を減退させる。僕はそれを経験的に知っている。
「なんか今日は疲れたから、外に出たくないな」という日ももちろんある。コミュニケーションが上手く取れず、全てが面倒に思えることもある。しかしそうした気分の上下動は、実際に外に出て、強い日差しを浴びて、街の喧騒に身を投じると、すぐに消えてしまう。だから気分が低調であっても、まずは動くことが大切だ。いったん歩き出せば、「良い気分」は後からついてくる。良い気分で歩いていると、子供たちが寄ってきて、屈託のない笑顔を向けてくれる。
子供たちの笑顔に出会うために、さぁ今日もインドを歩こう。
「写真撮ってー!」と迫ってくる子供たち。この20年でインドの子供たちも外国人に慣れ、「撮ってくれパワー」もかつてほど強力ではなくなったが、それでもガイジンが歩いていないような田舎町だと、こんな風に囲まれてしまう。それにしても満面の笑顔だ。
インド南東部オリッサ州の農村で出会った子供たち。長い棒を振り下ろして雑穀の脱穀を行っていた。大人顔負けの力感溢れるフォームだった。
ハッサン君はペンキ屋の息子。隣にいる父親の指導のもと、慣れない手つきでシャッターにペンキを塗っていた。仕事を手伝うようになってまだ間もない様子だ。カーストによる世襲制がまだ根強いインドでは、父や祖父の仕事を受け継ぐのが当然の生き方とされている。
インド北西部ラジャスタン州で出会った少女。この農家では100匹ほどの山羊を飼い、水牛と牛、ラクダも飼っている。家畜たちの世話は子供たちの大切な仕事だ。
インドの街角で、子供を三人も抱えた男が「俺を撮れ!」と言った。力自慢のつもりなのだろう。確かに三人は重そうだ。インドも経済成長に伴って子供数は減りつつあって、かつてのように子だくさんの家庭は少なくなっている。
インド西部グジャラート州で出会ったムスリムの少年が、笑顔を向けてくれた。マドラシャー(イスラム学校)へ行く途中なのだろう、聖典コーランと本を置く台を抱えていた。
冬の北インドは意外に冷え込む。朝の最低気温は7度ほど。ニット帽にマフラーに手袋という防寒対策バッチリの少女が歩いていた。まるでモスクワの朝みたいだけど、間違いなくインドだ。
インド西部グジャラート州で出会った猫を抱く少年。インドでは猫を見かけることが少なく、野良猫もタフで警戒心が強いのだが、この猫は毛並みもきれいで、少年になついていた。
朝、とれたばかりのキャベツを運ぶ農家の少女。大きく育ったキャベツを満載した竹籠はかなりの重量があるはずだが、しっかりとした足取りで歩いていた。オリッサ州の山間部は朝晩の気温差が大きく、キャベツやカリフラワーなどの野菜栽培に適している。