スマホの普及に伴ってセルフィー(自撮り)がすっかり日常の一部に定着したインドでは、「俺の写真を撮れ!」と声を掛けてくる人が増えた。テンションの高い人は昔からいたが、カメラを向けたときの瞬発力は年々アップしている気がする。基本、撮られ好きなのである。

 大の大人が街中で照れることなくヘンテコなポーズを取る。だからインド人は面白い。

 

india19-26973市場を歩いていると、やたらテンションの高い男が「俺を撮れ!」と服を脱いでポーズを決めた。出会って2秒で、この目力。ハンパない。髪型も含めて「ダイハード」の頃のブルース・ウィリスに似ていなくもなかった。

 

india19-26756インド人ってほんとに面白い。「俺を撮れよ!」というのでカメラを向けたら、とっさにこんな表情でポーズを取った。プレスリーみたいなシャツを着た、陽気なトラック運転手でした。

 

india19-20339頭にマフラーを巻いたメガネの若者が「俺を撮れ」と言うのでカメラを向けると、両手でハートマークを作った。「世界はラブ&ピースだ!」とでも言うのかと期待したが、何も言わなかった。「SNSにアップしろ。約束だぞ」と言い残して、彼は去って行った。約束は果たされたよ♡

 

india19-27319サングラスの男が「俺を撮れ!」と叫んで、愛車のヤマハにまたがった。革ジャン、グラサン、バイクにジーパン。インド人のベタなカッコ良さを集めた一枚になった。

 

india19-30958おじさんが「俺を撮れ!」と言うのでカメラを向けると、「あんた、コロンビア人か?」と真顔で聞かれた。中国人、韓国人、ネパール人あたりが定番で、中には「アメリカ?」「オーストラリア?」と聞く人もいるが、コロンビアは超意外だ。インドでは不思議なことがいろいろと起きる。

 

india19-28951オートリキシャに乗っていた男が着ていたのは、日本の少年サッカーチーム(?)のジャージだった。「これ、すごく気に入ってるよ。丈夫で暖かいしね。中国製だと思ってたけど」だって。大島くん、君のユニフォームは遠く離れたインドの地で役立っているようですよ。

 

india19-26989インドで「俺を撮れ!」と言うのは人間だけではない。神様も撮られ好きだ。戦いと殺戮の女神カーリーは赤い舌を出し、首にはしゃれこうべをぶら下げ、全身が真っ黒の異様な姿をしている。このエキセントリックでバイオレンスな神様が、なぜか人気を集めているというのもヒンドゥー教の奥深さだ。

 

india19-26880街中でおっさんが仰向けにぶっ倒れていた。昼間から酒を飲み過ぎたらしい。近くで雑貨屋の店番をしていた少年が「こんなところで寝てたら商売の邪魔だからどいてくれ」みたいなことを言っていた。飲酒へのタブー意識が強いインドでも、こうしたタチの悪い酔っぱらいはいる。

 

india19-20934サッカーチームに所属する男たちが「俺たちを撮れよ!」というのでカメラを向けると、お礼にチャイをご馳走してくれた。インドのサッカー人気はあまり高くない。クリケット、ホッケーに次ぐ3番手というところだ。「ジャパンのフットボールは強くて羨ましいな。シンジ・カガワはグレートだ。ヒデトシ・ナカタはレジェンドだ」と言われた。その通りだね。

 

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市場で野菜を売る女性に「撮ってよ」と言われたのでカメラを向けると、「ナマステ」と両手を合わせた。実は一般のインド人同士が「ナマステ」と挨拶し合うことはまずない。「ナマステ」「ナマスカール」は改まった挨拶で、特別なときや、外国人に対して使われるものだ。だから、たまに地元の人から「ナマステ」と挨拶されると、「ここは観光客が来る町なのか?」と若干警戒してしまう。

感謝を表す「ダンニャワード」も滅多に聞かれない言葉だ。それよりは「サンキュー」の方がずっと気軽に使われる。「インド人は感謝しないし、謝らない」というのは事実だが、それも外国文化の影響で変わってきている。若い世代は他人にぶつかったら「ソーリー」と謝るし、笑顔で「サンキュー」と言う。