2022年9月7日。明日からのバイク旅に備えて、レンタルバイク店を回って、ようやくいい感じの相棒に出会えました。 1,2時間歩いている間に、立て続けに二人の旅人から「三井さんですか?」と声を掛けられてびっくり。日本人旅行者なんてほとんどいないのに。レーの街は広いようで意外に狭いようです。
今回の相棒はインドBajaj製・アベンジャー220cc。3年前も、こいつでラダックを回りました。99%のバイカーが、ロイヤルエンフィールド・ヒマラヤン411ccを選ぶ中、あちこち探し回ってアベンジャーを選んだのは「全てにちょうどいい」から。パワーも十分だし、ある程度小回りもきく。そして安価。
あらゆる物価が上昇しているインドにおいて、レンタルバイクの値段はあまり変わっていない。2019年には1日800ルピーだったが、今回は850ルピー。20日間借りるので、その分を前払いする気でいたら、主人は「今10日分払ってくれ。残りは帰ってきたときでいいよ」と言ってくれた。こういうの、嬉しいよね。
インドに来てから2週間経ったが、すこぶる体調が良い。モモ(蒸し餃子)とトゥクパ(うどん)をもりもり食べ(写真はトゥクパの上にモモをトッピングした合わせ技)、高地でもよく歩いている。やっぱりインドは水が合うんだなぁと実感。この調子で今日からのバイク旅も無事に乗り切りたい。
インド北部ラダック地方をバイクで旅していると、突然発生した砂嵐に襲われた。大量の砂粒がバイクにもヘルメットにも吹き付けて、前が見えない。でも地元の人は普通に運転していたから、このあたりではよく起こる気象現象なのだろう。
砂嵐は10分ほどで収まり、風は嘘のように止んだ。すると、東の空に虹が架かった。川と草原がまぶしく輝き、その上に虹が伸びてきた。あまりの美しさに息を飲んだ。虹と砂嵐とは何か関係があるのだろうか。よくわからないまま、僕は虹にレンズを向けた。
ラダックでの撮影では、複数のレンズの使い分けが重要になります。16-35mmの超広角レンズと、135mmの望遠単焦点レンズの登板回数が増えるのは、広大な風景(には広角が有効)と、人々の小さな営み(には望遠が有効)が同時に存在しているから。特に超広角レンズを持っていくことをお勧めします。
標高4500mにある神秘の湖ツォモリリで目にした完璧なリフレクション。風が完全に止み、湖面から一切の波が消えた瞬間、湖全体が巨大な鏡になった。自然が見せてくれた奇跡に、言葉を失う。あまりにも完璧すぎて、CGのようにも見えるのが難点かもしれない。
ラダック地方随一の観光地になったパンゴンツォとは違って、ツォモリリは訪れる旅行者も少なく、この光景を目撃していたのは僕一人だけでした。何という贅沢。そして数分後に再び風が強まると、この奇跡のリフレクションはあっさりと失われてしまったのでした。
ラダックでは重機に萌えている。標高4000mを超える高地で岩山を削り、道を広げるために活躍するパワーショベルが、強い日差しを受けて輝く一瞬がカッコいい。鋼鉄の爪のおかげで、辺境の道も年々良くなっているのである。
もう5日間シャワーを浴びていないが、不快感はない。極度に乾燥した気候で、汗もあまりかかないので、頭や体が痒くなることもないし、肌の調子はむしろ良いぐらいだ。ラダックの人々にはお風呂に入る習慣がなく、バスルームのない家がほとんどだ(トイレはただの穴)。
ザンスカールにある尼僧院で行われている朝の勤行の様子。子供の尼僧たちの中で最年長の14歳の少女は、大人びた表情をしていた。彼女がこのまま尼僧院にとどまり続けるのか、還俗して女性に戻るのか。人生の選択はすぐそこに迫っている。
ナウシカが住む「風の谷」のモデルになりそうな場所は、ラダック地方にいくつかあるが、リンシェ村はその最有力候補だ。峻険な岩山に周囲を取り囲まれ、ごく最近まで徒歩でしか入ることができなかった陸の孤島だ。「腐海の毒も谷へは届かぬ」という大ババさまの声が聞こえた気がした。
リンシェから峠道を走り抜けてラマユルへ移動。今日はカルギルまで行く予定だったが、天候が悪化したために、ラマユルのゲストハウスに泊まる。1泊800ルピーで素晴らしく清潔な部屋。24時間熱々のお湯が使える。1週間ぶりのホットシャワーは、意識が飛ぶぐらいの至福のひとときだった。
バイク走行中、あまりにも眠くなったので、縁石にもたれて寝ていたら、トラックの運転手が「どうした?」と、車を止めて駆け寄ってきた。 「病気か?」 「寝てるだけです」 「そうか。チャパティ食うか?」 「ありがとう。でもいらない」 「リンゴは?」 おかげで目が覚めたから、結果オーライだ。
標高4950mにあるシンゲラ峠に置かれた色とりどりの旗・タルチョが、吹き抜ける強烈な風に揺れている。経文が書かれたタルチョは、風に揺れるたびに読経されたことになるので、風が強ければ強いほどたくさん徳が積めるのだ。それにしても寒い。体感温度はマイナス5度ぐらいだった。
3年前に比べて、一番変わったのはネット環境だ。ラダックの辺境の村にも巨大な電波塔が建ち、スマホでのネット接続が当たり前になった。そして誰もテレビを見なくなった。スマホでSNSや動画を見ている時間の方が圧倒的に長くなった。日本で10年かけて起きたことが、わずか2,3年で起きているのだ。
ラダックの村で、誰もテレビを見なくなったのは、電力事情によるところも大きい。たいていの村では夜間(18時から24時ぐらい)しか電気が使えないので、テレビが見られる時間は限られているが、充電可能なスマホは24時間見ることができる。というわけで子供も大人もスマホに夢中なのだ。
辺境・ザンスカールへのアクセスは年々良くなっている。特にカルギルとパドゥムを結ぶ道路は急ピッチで整備が進んでいて、真新しい舗装路がどんどん伸びている。辺境が辺境でなくなる日も、そう遠くはない。