前に「スナフキンのように孤独になるために旅をしている」と書いたけど、本当のところインドではまったく孤独ではなかったりもする。
 
 宿ではいつも一人だけど、町を歩けば「元気か?」「どこからきた?」「写真撮れよ!」と次々に声がかかるからだ。うるさいほどに。知り合いは誰もいないが、みんな古くからの知り合いのように親しく接してくる。孤独を感じている暇さえないぐらいだ。
 

 
 あなたと今すれ違ったことに必然性はない。たまたまだ。
 でも偶然すれ違った僕らが、こうして笑顔を交わし合うことには、何か意味があるのだと思う。
 

 
 人は本質的に孤独な存在なのかもしれない。
 でもたった一人で孤立しているわけではない。
 この世界には無数の人々が生きていて、お互いがお互いの笑顔を必要としているのだ。
 
 そんなことを考えながら、僕は旅を続けている。
 

石切場で出会った笑顔。分厚い石灰石は一人では持ち上げられないほど重いが、彼女の足取りは軽やかだった。
 

お祭りで出会った少女。頭に載せているのは水瓶に入った聖なる水。儀式に使う水は女たちが運ぶのだ。
 

川で洗濯をしていた女の子が向けてくれた素敵な笑顔。
 
ラッシー屋を経営するカーンさんは、チャーミングな笑顔が素敵なムスリムのおっちゃんだ。「ぜひまた来てくれよ」と言うので、「インシャアッラー(神がお望みなら)」と返したら爆笑された。