質問:写真の選び方

三井さんは写真をたくさん撮ると思いますが、その選別はどうやっているのでしょうか?
テーマを絞るなどなにかコツはありますでしょうか。
 
わたしのような素人ですと、どうも自分よがりな写真選びをしてしまいがちになり、また、選別がおっくうになってしまい、旅行写真を人に見てもらうと、だんだん見る人も嫌気がさしてきてしまうのです。
 
うまい選別の仕方などあれば教えてください。
 
 

三井の答え

 写真の選別は、写真を撮るのと同じぐらい重要なものです。特にデジタルの時代になり、いくらでもシャッターが切れるようになったので、その膨大な写真の中からどれを選びどれを捨てるのかという判断が、今まで以上に写真家に求められているのです。
 
 僕は撮った写真をその日のうちにパソコンの画面でチェックして、失敗したもの、不要なものはその場で削除してしまいます。3分の2はこの時点で消えてしまいます。
 
 残った3分の1の中から自分が「いい」と感じる写真をピックアップして、ラベルを付けておきます。それが全体の50分の1程度です。
 
 ホームページにアップロードしているのは、その中の半分程度でしょうか。つまり全体のわずか1%しか公開していないということです。この数字がもっと少ない人もいるでしょうし、もっと多い人もいるでしょうが、大事なのは「厳しい目で選ぶ」ということです。捨てるのをためらってはいけません。
 
 たとえば1日1000枚以上写真を撮った日なんかは、それをすべてチェックするのに何時間もかかったりしますが、それをやり続けていると、次第に自分なりの写真選びの基準ができあがってきます。そしてその基準が次に写真を撮影するときにフィードバックされるのです。「撮影」→「選別」→「公開」→「撮影」というループを繰り返すことによって、スキルは確実に磨かれていきます。
 
 写真を選ぶ際に「ひとりよがりの選び方になってしまう」とのことですが、それは換言すると「客観性の欠如」ということになるのだと思います。
 
 自分は面白いと思うのだが、他人にはその面白さがさっぱり伝わらない。そういうことって、写真に限らずよくありますね。すごくおしゃべりな人で、本人は「自分は面白い」って思っているんだけど、周りの人間は覚めた目で見ている。「自分の自慢話ばっかりしやがって」。そういう人っていませんか?
 
 それでは適切な批評眼、客観性を持つためにはどうすればいいのか。
 まず他人の写真を数多く見るということです。好きな写真、感銘を受けるような写真をたくさん見て、その作品のどこが優れているのかよく観察することです。
 
 それから、自分が撮った写真を多くの人に見てもらうことも大切です。ホームページをお持ちならそこにアップロードして、見た人の感想をもらう。あるいは写真展を開いてみる。
 
 と言っても写真展ってそう簡単に開けるものではないし、ホームページを見た人のほとんどがネガティブな意見をわざわざメールで送ったりはしません(たまにいますが、正直言ってちょっとヘンな人が多いです)。
 
 一番手っ取り早いのは、友人知人に見せることです。あまりに枚数が多いと飽きられるでしょうから、100枚程度にまとめて、それをスライドショーにして見てもらう。
 
 そのときの友人の反応をこっそりと横目でうかがうのです。「忌憚のないご意見を」なんて言っても、普通の日本人は他人をあからさまに傷つけるような言葉は避けますから、その人の表情の変化を読み取るのです。
 
 期待していたようなリアクションが得られずにがっかりすることもあるでしょうし、意外な写真に食いついてくることもあるでしょう。しかしそうやって一度他人の目を通して見ると、自分の写真がまた違った見え方をしてくるものなのです。
 
 ただ、客観性を過剰に持ちすぎるというのも考えものです。
 自分は面白いと感じるのに、他人はそう感じてくれない。このギャップは完全には解消されないし、また解消されるべきものでもありません。自分と他人との微妙なズレこそが写真を撮る際の個性なのだし、その個性(別の言い方をすれば「偏ったものの見方」)をなくしてしまえば、きっと「きれいだけれど何の面白みもない写真」を撮ることになるでしょう。
 
 写真を通して何を訴えたいのか。その本質的な部分を見失わないようにしたいものです。