質問:パスポートの管理

パスポートはいつもどのように、持ってますか?
田舎暮らしからか、普段、鍵をかけたり、貴重品の保管というものに慣れていません。
でも旅先では、さすがにこのままじゃ。。。と思っています。
 
“一人旅に出るの”と家族や友人に話すと、”アジアは治安悪いし、危ないよ。パスポート、お金取られたらどうするの”と。。。。みんなあまりいい反応はしてくれません。
でも私には、三井さんの写真のアジアの素敵な瞳が与えるアジアに対するイメージが強くて、そんなお金取るような悪い人ばっかりじゃないから大丈夫だよ。と確信しています。
 
 

三井の答え

 パスポートや現金などの貴重品の管理は、確かに気を遣う問題のひとつですね。パスポートは一応常に身に付けておいた方がいいでしょう。トラベルグッズ売り場などには、キャッシュベルトやズボンの中に入れるタイプの隠しポケットなどが売っているので、そういうものを買っておけば、ひとまず安心です。
 
 でも一昔前のように「パスポートは命の次に大切だ」とまで思い込む必要はありません。大使館に行けば、多少時間はかかるかもしれないけれど再発行してくれるんだから、現金をごっそり盗まれたり、怪我をさせられたりするよりは、パスポートをなくす方がずっとマシです。
 
 僕は貴重品の管理に関しては、比較的ルーズな方だと思います。パソコンやカメラなども平気で宿に置いてきてしまいます。「宿を信用しなければ、いったい誰を信用すればいいのか」というのが僕の危機管理におけるひとつの哲学になっているのです。それでも2年に及ぶ旅の経験の中で、ものを盗まれたことは一度しかありません。それもインドの子供がふざけて盗ったものでした。
 
 今一緒に旅をしているアメリカ人のウィリアムには、「それは運がいいだけだよ」と言われます。彼はロサンゼルスの治安の悪い地区で生まれ育ったので、まず最悪のケースを考えることに慣れているのです。だから僕が何でも部屋に置いてきちゃうことが気に入らないのです。
 
 僕の経験を通して言うなら、アジアの治安は悪くはありません。もちろん最低限の注意は払わなくちゃいけないけれど、必要以上に恐れることはありません。だから、あなたのお友達や家族が言う「アジアは治安が悪い」という意見には、僕は同意できません。
 
 たぶん「アジアは治安が悪い」というイメージは、メディアを通して得た情報を元に作られたものなのだと思います。しかし、こうした二次三次情報はあまり信用しない方がいい。その格好の例が、僕がフィリピンを旅している間に起きた「非常事態宣言」でしょう。これは日本でも比較的大きく報道されたらしいのですが、僕はマニラにいなかったせいで、まったく何の影響も受けませんでした。たぶんテレビをつけなかったら、その事実さえ知らないまま旅をしていたことでしょう。マニラに住んでいる人にとっても、状況は同じようなものだったようです。騒ぎがあったのはマニラでもごく一部に限られていて、それ以外は平穏無事だったのです。マニラに住む人が「NHKやCNNを通して見ると、フィリピンが別の国のように見えた」と言っていたのが印象的でした。
 
 「日本で伝えられるニュースとは、すなわち悪いニュースのことだ」という法則は、比較的馴染みの薄い国に共通して見られます。もちろんその悪いニュースが事実の一部分であることは確かだけれど、その事実の一部分がその国全体のイメージにまで拡大されかねないところに、ニュース報道の危うさが潜んでいるのです。
 
 例えば新宿歌舞伎町で発砲事件があって、ヤクザが一人殺されたというニュースを元に、「日本という国はしょっちゅう人が射殺される危ない国だ」と判断するようなものです。日本人なら誰でも「そりゃ違うだろう」と突っ込みを入れたくなりますよね。
 
 いずれにしても、旅人は自分自身で身の安全を確保しなければいけません。「何を危険だとして避け、何を安全だと信じて取るのか」という取捨選択は、旅人ひとりひとりの手に委ねられているのです。