日本のおよそ40%の国土に1億6000万もの人が住む超過密国家バングラデシュ。人口密度は日本のおよそ3倍。右を見ても左を見ても、人また人だ。
政治の混乱や自然災害によって長年発展から取り残されてきたバングラデシュでは、いまだに仕事の多くを人海戦術(マンパワー)に頼っている。機械化を進めるよりも、人を雇った方が安く済むからだ。
彼らは今日も生きるために働く。埃だらけになりながら、額に汗しながら。
シンプルでありながら圧倒的な存在感を放つ人々。そんなバングラデシュの働き者たちにカメラを向けた。
バングラデシュの精米所で働く女性たち。精米の過程で出たヌカの粉がもうもうと舞う中、粉だらけになって働いていた。ムスリムが大半を占めるバングラデシュは、女性が撮りにくい国のひとつだが、彼女たちは堂々とカメラの前に立ってくれた。
食用油を作る工場で働く男。古めかしい圧搾機に菜種を入れて油を絞り、そのカスを再びスコップで機械に投入する。バングラデシュも隣国インドやミャンマーなどと同様に料理に油をよく使う国だ。
バングラデシュの町工場で働く職人が、旋盤を使ってエンジンの部品を作る。裸電球の光によって、男の姿が壁に巨大な影絵を作り出していた。
ビスケットを焼く少年。素朴な味の安いビスケットだが、焼きたては結構美味い。彼はこれから一人前の菓子職人になるための修行の日々を送る。
首都ダッカの市場で、プラスチック製のタンクを洗う男。物不足の国バングラデシュでは、一度使ったものを何度でも繰り返し使うリユースが徹底されている。
インドネシアから輸入された石炭を、船底から運び出している労働者だ。竹カゴに詰め込んだ石炭を頭にのせて、不安定な板の上をすたすたと歩いていく。
船から石炭を運び出す男。石炭にまみれて真っ黒になって働く姿は「マンパワーの国」バングラデシュそのものと言っていい。
貨物列車で砂利を運ぶ。バングラデシュは英国植民地時代に敷設された鉄道網のお陰で、意外なほど鉄道輸送が発達した国だ。1億6000万の人口を養うために必要な物資の多くは、貨物列車と貨物船で運ばれている。
ディーゼルエンジンの部品を作る鋳造工場で働く男。1500度の熱でドロドロに溶かした鉄を、砂型に注ぎ込む。鋳造は素早さと正確さが要求される力仕事だ。
種をまこう。まずそこから始めることだ。バングラデシュの農民は楽しげな表情で田んぼに種籾をまいていた。地に足の着いた揺るぎない暮らしが、そこにあった。