3週間?あんた何するの?

 ミャンマーの旅を終えて、ヤンゴンからビーマンバングラデシュ機に乗ってバングラデシュの首都ダッカに飛んだ。この「ヤンゴン→ダッカ→コルカタ」という路線は、東南アジアと南アジアを渡り歩く僕のような旅行者にはうってつけだけど、そんなに需要がないらしく、プロペラ機だった。機内食はリンゴと水。シンプルで良い。

 

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 バングラデシュ入国にはビザが必要だが、空港でアライバルビザが取れるので問題ない。しかし空港のビザ担当職員が絵に描いたような腐れ公務員で腹立たしかった。意味不明な横柄さと、度を超えた不親切さと、職務遂行意思の欠如。ああいうクソな奴らを国の玄関に据えておくことの意味はひとつ「外国人なんて来なくていい」である。

 そのビザ担当職員に「バングラには何日いる?」と聞かれたので、
「3週間」と答えたら、
「観光で3週間?あんた何するの?」と呆れられた。
 余計なお世話だよ。君には一生わからないバングラの魅力を、俺は知っているんだよ。

 以前、インドの空港で同じように「何日滞在するの?」と聞かれて「3ヶ月」と答えたら、「それじゃ短い。インドの魅力は6ヶ月いないとわからない」と説教された。ちょっとうざいけど、自国の文化や伝統に誇りを持つインド人の態度は好感が持てた。
 対するバングラよ・・・確かに観光名所なんてないけどね。でも、せっかく好きでこの国を訪れている(かなりレアな)バングラファンをがっかりさせるような態度を取らなくたっていいのにね。

 ちなみに日本人はバングラデシュのビザ代金は無料だが、一緒にアライバルビザの列に並んでいた欧米人はみんな50ドル支払っていた。高いなぁ。日本のパスポートの強さはこういうときにも実感できる。長年にわたる外交努力とODAに感謝しよう。

 

 

ダッカでSIMカードをゲットする

 ダッカに着いてまずやるべきなのは、SIMカードをゲットすること。これは実に簡単だ。パスポートさえあれば10分で登録が完了する。SIM代金は100タカ(140円)、ネットは6GBのパックが600タカ(840円)。インドほどではないが、かなり安い。モティジールにあるグラミンフォンセンターは、外国人の扱いにも慣れているのでお勧めだ。

 

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 携帯キャリア最大手グラミンフォンのオフィスで働いていたのは、ほとんどが若い女性だった。2年前は男性ばかりだったので、ちょっとびっくりした。
「教育レベルが上がったからだと思います」と英語が堪能な女性の担当者が教えてくれた。「今では女性も大学に行って働くのが当たり前ですから」
 保守的で男尊女卑の傾向が強いバングラ社会も、徐々に変わりつつあるようだ。

 もちろん旧態依然とした社会構造は、特にダッカ旧市街には色濃く残っている。そこは男の世界、おっさんずワールドである。市場にいるのは男ばかり。船着き場や町工場で働くのも男ばかり。でもITのような新しい業界では、若くて優秀な女性がどんどん登用されている。こうした傾向は今後も加速することだろう。そしてバングラデシュを静かに変えていくはずだ。

 

ba18-00426ダッカ名物の赤い二階建てバス。女性が車掌を務めているのは初めて見た。保守的なバングラデシュ社会でも、女性の社会進出が確実に進んでいる。

 

 バングラデシュのインターネット事情は思いのほか良かった。ダッカ市内はもちろんのこと、地方でも大きな町では4Gが使えるし、回線の遅延もほとんどない。地域や時間帯によって極端に遅くなるインドよりもずっと良い印象だ。今後スマホの普及がもっと進めば、トラフィックが増えて回線も遅くなるかもしれないが、今のところは快適だ。

 

 

旅人を選ぶ街・ダッカ

 ダッカは面白い街だ。少なくとも僕にとっては、これほど歩き甲斐のある街は他にはない。何が出てくるかわからない迷宮に迷い込んだようなワクワク感に満ちている。

 ダッカは世界で最も過密で、世界で最も汚い首都である。最近はオシャレで小綺麗な新市街の開発も進んでいるが、南部に広がる旧市街。オールドダッカの混沌はいまなお健在だ。細く入りくんだ道に大勢の人とリキシャがひしめきあっている。側溝のドブからは小便のにおいが漂ってくる。ゴミが道ばたにうずたかく積み上げられ、そこから煙が立ちのぼっている。

 

 

ba18-04270ダッカの南を流れるブリゴンガ川はゴミと汚水が大量に流れ込む世界有数の汚い川だが、夕陽の元で見ると美しく輝いている。見る角度によって美しさや面白さが変わるのは、ダッカの街も同じだ。そこにはわかりやすく整えられた名所はないけれど、他の街にはない意外性に満ちている。旅人を選ぶ街なのだ。

 

ba18-00518ダッカの路上で営業する両替屋は、ボロボロの紙幣をピン札に替えて、いくらかのコミッションを取るのが主な業務だが、外国のお札の両替も行っている。彼が持っていたのは北朝鮮の5000ウォン紙幣。「新品だよ」と言うのだが、明らかに見本である。彼は一体どこでこれを手に入れたのだろう?

 

ba18-01560ヘンなTシャツを着ている男をダッカで発見。「今食べる」って一体なんだろう?

 

ba18-06815aダッカの町工場で出会った男は、まさに理想的な渋イケメンだったが、それだけにシャツの胸元の漢字が気になって仕方なかった。「五年千歳」って何のパワーワードだよ。中国からの古着が流れてきたのだろうか?

 

ba18-12128ダッカのバナナ市場で働く男。インドやバングラデシュでは、クイーンのフレディー・マーキュリーに似た風貌の男をときどき見かける。口ひげとタンクトップのせいだと思っていたけど、実はフレディーの両親はインド生まれで、彼も幼少期をインドで過ごしていたと知ってびっくり。

 

ba18-24641ダッカで見かけたMITSUBOSHIの文字。一瞬、三菱のパクりなのかと思ってしまいましたが、実は「三ツ星ベルト」という99年前に創業された工業用ベルトの専業メーカーでした。知られざる世界的ブランド・三ツ星。バングラデシュの機械を陰で支えています。

 

ba18-01158雑貨屋で売られていた「ドラケーキ」は、どら焼きではなく、カスタードクリームの入ったスポンジケーキだ。そしてなぜか「Italian Technology」と書かれている。バングラデシュでもドラえもんの人気は高くて、グッズもいろいろ売られている。