去年の11月から始めた今回の長旅も、いよいよ最終盤。残すところ2週間ほどになりました。
3月9日から12日には、インド最大の聖地バラナシで撮影ツアーを行いました。去年の引き続き二度目の開催となったツアー。20歳から73歳まで実に幅広い年齢の方に参加してもらいました。よく歩き、よく撮り、そしてよく話した、濃密な三日間でした。参加者のみなさん、本当にありがとうございました!
バラナシはもう何度も訪れているが、相変わらず面白い街だ。インドらしさがぎゅっと凝縮された街だ。
日が昇っては沈み、人々が祈り、沐浴し、遺体が焼かれていく。生と死と、聖と俗のドラマが、延々と繰り返されている。
バラナシに珍しく雨が降った朝。雲間から一瞬だけ顔を覗かせた太陽が、神々しい場面を作り出した。この地に巡礼に訪れるインド人にとって、母なる河ガンガーと降り注ぐ日の光は「神様」そのもの。祈りの対象なのだ。
毎年バラナシを訪れていると、いつも見かける「馴染みの顔」に再会するのが楽しみになる。毎朝、夜明けとともにプジャを行うこのおじさんも、定番の登場人物の一人。同じ場所で、同じ時刻に、同じ祈りを繰り返す。おそらく来年も、再来年も。この街では、時間が円を描いて流れているのだ。
バラナシはインドでもっとも野良犬の多い街。10匹の子犬に同時に乳を吸われて、ちょっと困り気味の母犬がいた。この勢いで増え続ければ、遠からずガート(沐浴場)は犬だらけになってしまうことだろう。
インドの街角で「蛇遣い」を見かけることは少なくなった。毒を持つコブラに噛みつかれないように手なずけてみせてお金をもらう。蛇遣いの男のいかにもな風貌が良かった。
バラナシにはサドゥーが多い。モノやカネへの執着を断った放浪の行者であるはずの彼らが、ニコニコと、かなりしつこくお金をせびるのは謎だ。ビジネスサドゥー、あるいはコスプレサドゥーも相当数混じっている様子。いずれにしても絵になる存在なのは確かだけど。
日は昇り、また沈む。永遠に循環する時間の中を、この街は生きている。 またいつか、たぶん近い将来、僕はバラナシを訪れることになるだろう。お前はそういう運命にあるのだと、ガンガーに言われたような気がした。