インド人にとってヒゲは、髪型よりも重要な意味を持つものなのかもしれない。「髪とヒゲは神様から与えられたものだから切ってはならない」という戒律を守るシク教徒だけではなく、インドに住む中高年男性の多くが立派なヒゲを生やしている。

 インドの男たちにとって、ヒゲは男の威厳を保つのに欠かせないファッションアイテムであり、その手入れには十分な時間と手間をかけている。髪型と同じように「ヒゲ型」も様々な種類があり、自分に似合うスタイルを探しているようだ。だから「そのヒゲ、素敵ですね」と声をかけると、とても喜んでくれる。

「あんた、よくわかってるじゃないか。さぁここに座りなさい。チャイをご馳走してやろう」
 ヒゲ面の男はとっつきにくくて怖そうな雰囲気もあるが、話してみると意外に親切で、義理堅い人たちだとわかる。ヒゲを褒めれば、すぐにその仏頂面がほころんで、チャーミングな素顔が現れるのだ。

 

india18-48219インドでお金を払ってチャイを飲むことは滅多にない。街を歩いていると必ず誰かが「チャイ飲むかい?」と声をかけてきて、ご馳走してくれるからだ。チャイの甘さは、疲れた体だけではなく、心にも染み渡っていく。

 

india18-46710インドでは立派なヒゲを蓄えた老人をよく見かけるが、その中でもこの人は特別すごかった。俗人を超越した仙人のような真っ白い髪と髭だ。人生について深い含蓄のある言葉を話し出しそうな雰囲気が漂っていた。

 

india18-52056立派な口ヒゲを生やした男が、真鍮の水瓶を作っていた。汚れた手と足の裏、それとは対照的に綺麗に整えられたヒゲに、職人の矜持を見た。

 

india18-56789ターバンとヒゲとサングラス。インドの男をアゲる最強の三点セットだ。カッコつけているわけでもなく、ごく自然にこういうファッションで暮らしているというのが素敵だ。

 

india18-58357インド北西部ラジャスタン州に住む放牧の民・ラバリ族の男。真っ赤なターバンを頭に巻き、白い服を着て、家畜を追うための長い杖を持っている。伝統のスタイルが実に鮮やかだった。

 

india18-60373「ラッキーカラーはオレンジ」と占い師に言われたわけじゃないんだろうけど、全身オレンジで決めた男が路地裏に立っていた。毛先がピンと跳ね上がったヒゲも、なかなか素敵だった。

 

india18-64520インド北西部パンジャブ州に住むシク教徒たちにとって、長く伸ばしたヒゲとターバンは民族的アイデンティティーの象徴だ。オートリキシャの運転手だって、実に男らしくカッコよく見える。目つきはとても鋭いが、実は親切な人だった。

 

india18-64602インド北西部パンジャブ州に住むシク教徒は、髪の毛とヒゲを「神から与えられたもの」として切らず、長く伸ばしている。カラフルなターバンは長髪を覆うためのものだ。パンジャブ人は顔の彫りが深く、肌の色が明るいアーリア系の特徴を持つ人が多い。

 

india18-65105インド北部パンジャブ州に住むシク教徒にとって、ターバンはいつも身に着けている「体の一部」のようなもの。革靴を手作りする職人も、きっちりとターバンを巻いた伝統のスタイルで仕事に打ち込んでいた。

 

india18-66656インド北部ウッタルプラデシュ州にいた素晴らしいヒゲの持ち主。白い帽子をかぶり、綿菓子のようにふわっと広がったヒゲを持つムスリムの男が、ロティーをこねていた。やっぱりインド人はヒゲがよく似合う。