インドは色に溢れた国だ。農作物やスパイスも色鮮やかだし、女たちが身に着けるサリーもビビッドな色づかいのものが多い。太陽光線が強いインドでは、原色に近い派手な色がより映えるのだろう。このインド人のカラフル嗜好は、最近始まったものではなく、長い歴史を持つもののようだ。

 世界で最も古くから綿花の栽培と木綿生地の製造が行われていたインドでは、染色職人の何千年にもわたる試行錯誤の末に、木綿の織物に明るい色の染料を定着させる方法を確立した(それにはレモン果汁、山羊の尿、ラクダの糞などが使われていたという)。当時のヨーロッパの染色生地は、数回洗うと色があせてしまったが、サラサと呼ばれたインドの布地はいつまでも色褪せなかったようだ。

 色鮮やかでしかも褪せないインド製の織物に対する関心の高まりは、やがてヨーロッパの消費者とインドの織物生産者を東インド会社を通じて結びつけ、それがイギリスに産業革命が起きるきっかけのひとつになった。色に対する憧れが、歴史を動かしたのだ。

 もちろん今では、生地の染色にラクダの糞を使うことはない。化学染料による大量生産が可能になったことで、かつては貴重だった色鮮やかな衣装は、庶民の手にも届く普段着のファッションになったのである。

 

india18-24759インド南部カルナータカ州の精米所で働く女たち。天日干しするために地面に広げた米を、4人の女性たちが足を使ってかき混ぜている。カラフルなサリーが青空によく映えていた。

 

india18-49306インド西部グジャラート州にあるサリーのプリント工場で働く女性。色鮮やかな模様がプリントされたサリーを地面に広げて乾かしている。風で飛ばされないように石ころを置き、1時間も放置すればカラカラに乾いてしまう。

 

india18-37295インド中部マハラシュトラ州の農村で、古い家の瓦を屋根から下ろしている人々。老朽化した家屋をリフォームしてから、再び瓦を拭き直すようだ。専門の大工ではなく、手が空いている村人が行う共同作業だ。

 

india18-46881インド西部グジャラート州で豆の収穫を行う女たち。チャナと呼ばれる豆を収穫し、大きな布で包んで牛車まで運ぶ。力仕事を黙々とこなす女たちの姿は実にたくましい。

 

india18-26031インド西部グジャラート州の漁港で働く男たち。遠洋に出る漁船に真っ赤な漁網を積み込む作業中だ。男たちは海に出て、女たちは港を守る。男女の役割分担がはっきりしているのが漁師町の特徴だった。

 

india18-33891インド中部マハラシュトラ州でポンギという食べ物を作っているおばさん。小麦粉と水と着色料を混ぜた生地をマカロニ状に成型して、天日で乾かす保存食だ。カラーバリエーションもいろいろある。


 

india18-20993インド南部タミルナドゥ州にあるバナナの卸売市場で働く男。まだ青いうちに収穫されたバナナは、男たちの手でトラックに積み込まれ、インド各地に運ばれていく。店頭に並ぶのは、数日を経て黄色く熟した甘いバナナだ。

 

india18-29715インド中部マハラシュトラ州にあるタマネギの卸売市場で、大量のタマネギを仕分けする女性。タマネギはトマトやジャガイモと並んでインドでもっともポピュラーな野菜なので、取り扱う量も半端ない。

 

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インド中部マハラシュトラ州にはウコン(ターメリック)の卸売市場があった。黄色いウコンはインド料理に欠かせないスパイスなので、取り扱う量も多い。トウガラシよりはマシだが、ウコンの粉末もやはり刺激物なので、市場で働く人々はよくクシャミや咳をしていた。

 

india18-37127インド中西部マハラシュトラ州の高原地帯では、イチゴの栽培が盛んだ。もともと雑穀やタマネギ、トマトといった作物を植えていたが、単価の高いイチゴを露地栽培する農家が増えている。昼と夜との気温差が甘いイチゴを生むという。


しかしお気づきのように、柔らかくて繊細なイチゴをボンボン放り投げて収穫するのは褒められたことではない。きっと彼女は経験が浅く、トマトやタマネギの収穫と同じように考えているのではないだろうか。