インド北部ラダック地方の住民の多くはチベット仏教を信仰する仏教徒で、各地に古い寺院(ゴンパ)があり、多くの僧侶が修行生活を送っている。ラダックでもチベットと同じように「一家のうち一人は僧侶か尼僧になる」という習慣があり、それは今でも続いているという。

 

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 レーの街から車で30分ほどのところにあるピヤン僧院で、一年に一度開かれる祭りピャン・ツェドゥプを見学することができた。仮面を被り、派手な衣装に身を包んだ僧侶が行う仮面舞踏には、仏教に対する敵(ダオ)を供養し、破壊して滅するという目的があるという。

 ピヤン僧院の仮面舞踏・チャムは、とてもカラフルで見応えがあった。「仏教が伝わる前に人々が信仰していた土着の神々を仏教に改宗する」というストーリーに沿って仮面劇が進行していく。

 

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 仮面舞踏の幕間に登場するのは、老人の仮面を被った道化役の男たちだ。彼らの役割はユーモラスなやり取りを交えながら、見物客(主に外国人観光客)に金をせびること。首尾良く50ルピーや100ルピー札をゲットした道化者の顔は、満足げに笑っているように見える。この世は「聖なる者」と「俗なる者」が折り重なって出来ている——彼らの存在はそんなことを示しているのだろうか。

 

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 ヌブラ渓谷にある僧院で行われていた問答修行。まだ10代の若い僧侶たちが「石とは何か」とか「なぜ地球は丸いのか」といった難問を、大声で問い、大声で答えている。表情もリアクションも大げさで、見ていて飽きない。

 仏教の知識と論理的思考を鍛える訓練なのだそうだが、あまりにも大げさで感情表現豊かなやり取りを見ていると、新人役者の舞台稽古のようにも思えたのだった。

 

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india18-85655ラダック地方北部ヌブラ渓谷にあるデスキット僧院には、高さ30mの巨大な弥勒菩薩像がある。2010年に建立されたばかりの新しい仏像だが、信仰心に篤い仏教徒たちが遠方からお参りに訪れる人気スポットになっている。

 

india18-82548ラダック地方の中心都市レーにある巨大なマニ車を回す男。チベット仏教には欠かせない道具であるマニ車は、側面にマントラが刻まれ、中には丸められた経文が納められていて、回転させるとお経を唱えたのと同じ功徳があるとされている。

 

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ラダックの農村で出会ったおばあさんが手に持っているのは携帯型のマニ車。1回まわすたびに1度お経を唱えたのと同じ御利益があるので、ラダックの老人は暇さえあればこのマニ車を回している。「余生は信仰に生きる」というのが、仏教徒のごく当たり前の生き方なのだ。

 

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「マニ石」とは平たい石にマントラ(真言)を刻み込んだもの。これを大量に積み上げたマニ壇はラダック各地でよく見かける。マニ石によく刻まれている「オムマニベメフム」はチベット仏教でもっともよく知られている観音菩薩のマントラだ。

 

 

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ラダックの民族衣装を着て、伝統音楽と伝統舞踊を披露する人々。ゴンチェと呼ばれるウール製の丈の長いコートを着て、太鼓を打ち鳴らす横顔が、実にカッコよかった。