「旅先で笑顔を撮る秘訣は何ですか?」と質問されることがよくあります。でも、これに答えるのは結構難しいんです。「こうすれば100%笑顔になる」なんて必殺技は(少なくとも僕の知る限り)存在しないからです。

 もちろん「相手をリラックスさせるテクニック」はいくつかあります。でも、それがどんな場面でも使えるかというと、決してそうではありません。ある場面では上手くいった技が、別の場面ではまったく効かない、ということもよくあるんです。なにしろ目の前にいるのは生の感情を持った人間なのだから、その場の空気に応じて、様々な技を臨機応変に繰り出していくしかないのです。

 たとえばインドの街角で出会ったばかりの人に笑顔になってもらうためには、「演じる」ことも必要です。相手にとって「なんだか面白いガイジン」という役柄を演じるわけです。街に溶け込む必要はない。むしろ周囲から浮き上がっていることを利用して、写真を撮るわけです。

 そして、何よりも大事なのは、「心から楽しんで撮る」ということです。眉間に皺を寄せながらシャッターを切っている人間に、笑顔を向けてくれる人は少ない。肩の力を抜いて、まず自分自身が笑顔になることから始めないといけません。

 6月に全国4都市で行う「写真教室・初級編」では、「良い表情の撮り方」を重点的にお話しします。被写体へのアプローチ法やコミュニケーション術など、僕が実際に撮影した写真をご覧いただきながら、自然で生き生きとした表情を引き出すテクニックをレクチャーする予定です。

 

india19-19574インド南東部オリッサ州で田植えをしている女性。アディヴァシと呼ばれる先住民の女性が、苗代で育てた苗をまとめる作業をしていた。インドでも田植えの主役は女たちだ。

 

india19-98694インド北部ウッタルプラデシュ州で出会った笑顔。色鮮やかなサリーを身にまとった女性が、井戸の水で食器を洗っていた。インド流ファッションは、普段着なのにすごくカラフルなのだ。

 

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インド南東部オリッサ州で出会った笑顔。井戸で汲んだ水をアルミ製の水瓶に入れて、家まで運ぶ。腕に隙間なく彫られた入れ墨が、先住民アディヴァシの証だ。

 

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インド南東部オリッサ州の山村で出会った少女。美しい逆光の中、大きな瞳の女の子が素敵な笑顔を向けてくれた。

 

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インド北西部ラジャスタン州に住む小数部族ガラシア族の女性。雨季のあいだに水をためるための貯水池を作る工事を行っていた。ガラシア族の女性は刺繍入りのカラフルな民族衣装をいつも身に着けている。

 

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インド北西部ラジャスタン州の農村で出会った少女。共同の水場で汲んだ水を、アルミの水瓶で運ぶ。かなりの重量があるはずだが、バランスを崩すことなく、すたすたと歩いていた。

 

india19-61950インド西部グジャラート州で出会った笑顔。安いアクセサリーを路上に並べて売る女性が、はにかんだ顔を向けてくれた。服装にも顔つきにも存在感がある。

 

india19-51987インド西部グジャラート州の市場でトウガラシを売っていた女性。大ぶりの生トウガラシは見た目ほど辛くはないので、スパイスとしてではなく野菜のように食べられている。

 

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インド西部グジャラート州の農村で出会った少女。ネックレスもワンピースもヘアピンも、カラフルでオシャレだ。そして何より素敵なのが、この笑顔!

 

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インド中部マハラシュトラ州で出会ったムスリムの少女。髪の毛をすっぽりと覆い隠すヒジャブを身に着けてはいるが、あふれ出る好奇心と笑顔までは隠しきれなかったようだ。