9月2日。
成田空港からエアインディアでデリーに向かう。どういうわけか機内はガラガラだった。搭乗率は30パーセントを切っているんじゃないか。乗客にとっては空いてる飛行機はありがたいけど、エアインディアの経営状態がちょっと心配になる。10時間のフライト後、いよいよインドだ。
無事にデリーに到着した。気温36度で超蒸し暑い。バックパックを背負って10分歩いただけで汗が噴き出てくる。やっぱり夏のインドはしんどいなぁ。人から思考力を奪う暑さだ。でも明日からはラダック。涼しい山が待っている。
9月3日。
無事にラダックの中心都市レーに到着した。標高3500mの高地なので、今日一日はのんびり高地順応する、つもりだったんだけど、結局あちこち歩き回って写真を撮ってしまった。ラダックの美しい光が「こうしちゃいられない」という気分にさせるのだ。1年前に高地を経験したせいか、体調もいたって良好だ。
レーで宿泊したのは、去年も泊まったゲストハウス。静かで明るくて、とても居心地の良い部屋だ。高温多湿のデリーから来ると、ラダックは完全に別世界。
それにしてもラダックの空は青すぎる!
標高3500mにある中心都市レーの王宮にも強烈な日差しが降り注いでいた。今日は特に日差しが強く、気温も上がったようだ。なんかついてる。これからの旅がとても楽しみだ。
レーの街を歩いていたら、お祭りに遭遇。お寺の僧侶たちによる伝統の舞が披露されていた。何の情報もなかったのに、たまたま通りかかったら、この迫力、このカラー。今回のラダックは出だしから幸運の女神(いや仏様かな)が輝いているようだ。
このお祭りを撮影していたら、不意に「三井さんですよね?」と声を掛けられてびっくり。報告会や写真教室にも参加してくれていた女性だった。「祭りを撮っている姿を後ろから観察していたんです」とのこと。ちょっと恥ずかしい。でも祭り撮影の成否の8割は「場所取り」が握っていると思う。厚かましいぐらいじゃないと、迫力のある写真は撮れない。
9月4日。
カルギルにやってきた。インド政府がカシミールの自治権を剥奪すると発表した直後の混乱で、カルギルの治安が少し不安だったが、実際に歩いてみると去年と何も変わらない親しいムスリムの人ばかりで拍子抜けした。食堂に入れば孫を抱いたおじさんに写真をせがまれるし、ケバブ屋も一本おまけしてくれた。
今後、ラダック行きを検討されている方は、安心してください。レー周辺はもちろんのこと、ムスリムが多いカルギルも何も問題ありません。穏やかな人々と美しい青空に会いにきてください。現場からは以上です。
9月5日。
これからバイクでザンスカールに向かう。最後の秘境とも言われる場所なので、今後数日はネットに繋がりにくいことが予想される。投稿が途絶えてもご心配なく。一応JK州のSIMは持っているけど、ザンスカールは特に通信状態が悪いらしいので。
9月17日。
2週間ぶりにレーに戻ってきた。ザンスカールのネット事情は噂以上に悪くて、10日以上、情報から隔絶された「もうひとつの世界」で過ごすことになった。いろんなことがあったけど、とにかく元気だ。素晴らしい旅になった。
ザンスカールの通信事情の悪さは噂以上だった。JK州専用SIMカード持っていても、インターネットにはまったく接続できなかったし、電話さえかけられなかった。だから人と連絡を取るときは「○時に○○で待っています」と伝言を頼むしかない。もしあなたがSNSやインターネットから離れる「ネット断食」をしたかったら、ザンスカールがお勧めだ。
この12日間、ネットから完全に遮断されていた。こんな経験は10年以上なかった。旅先でも現地のSIMを買ってネットに接続するのが当たり前だったから、最初はイライラした。でもすぐに慣れた。情報がなければ、自分で生み出せばいい。自分で美しさを探せばいい。ネットのない日々はとても充実していた。
ザンスカールを毎日バイクで走り回った。山と青空と透明な光があれば、それで十分だった。ときには情報から距離を置き、何も知らない裸の状態でその土地に向き合うことが大切なのだと思う。とはいえネットから遮断された土地は、インドにも、世界にも、もうあまり残されてはいないけど。
今回の旅で乗っているのはこんなバイク。インド製220ccだ。パワフルなので、ザンスカールの荒れ道も問題なく走ることができた。レンタル代は1日700ルピー(1100円)。レーの町で簡単に借りることができる。
ザンスカールにはデンジャラスな道も多い。ひとつ間違えば谷底に真っ逆さま、という峠道をバイクで走るのはかなりの緊張を強いられる。でも轍が2本ついているのを見ると、ここを四輪車で走る人もいるのだろう。信じられないけど。 pic.twitter.com/iUTAhnXY2q
— 三井昌志 (@MitsuiMasashi) September 17, 2019
ラダックは9月が最高なんじゃないかと思う。旅行のハイシーズンが終わり、観光客は減っているが、気候は本当にすばらしい。レーの最高気温は17度、最低気温は5度だが、昼の日差しは強烈なので、体感温度はもっとずっと温かい。この2週間で曇ったのは1日だけ。あとは雲さえほとんど見ない晴天だった。
ってなことを書いたそばから、空が曇ってきた。日差しが遮られると、途端に秋の寒さに見舞われるのが9月のラダックの特徴だ。それにしてもこの2週間で二度目の曇り空が、お休みと決めた日に重なるなんてラッキーだ。
さぁ明日からはレーから南に下ってスピティに向かう。初めての土地でどんな出会いが待っているか、楽しみだ。