9月18日。
 レーから山道を360km走りきって、ケーロンにやってきた。標高5260mのタグラン・ラ峠には、うっすらと雪が積もっていた。どうやら昨日降った新雪らしい。そりゃ寒いわけだ。手袋もして、ダウンジャケットも着込んでいたけど、5000mを超えると体の芯から冷え切ってしまう。

 

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 ラダックの峠道では、雪解け水が川となって道路を寸断している場所がいくつもある。大型トラックでさえ難儀するような道を、どうやってバイクで突破するのか?要するに気合いだ。ファーストギアでためらうことなく一気に進む。これでだいたい乗り切れる。靴も靴下もびしょびしょだけど。

 

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 見渡す限り人の気配も人工物すらない。こんな風景を目の前にしたときの気持ちを、どんな言葉で表現したらいいのだろうって考えて、そうか無理に言葉にする必要なんてないってことに気付いた。僕らは言葉にならない思いを伝えたくて、写真を撮っているのだから。

 

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 9月24日。
 6日ぶりにネットに接続!この5日間、スピティを旅していた。ザンスカール同様、スピティの通信事情も最悪で、宿やレストランにWifiは備わっているものの、一度もネットに繋がらなかった。レストランのWifiパスワードが「have patience」(忍耐を持て)というのは自虐的ジョークだろう。

 

 スピティに向かう道は想像以上にひどい道だった。雪解け水が流れる川を渡り、石ころだらけの急な坂道を登っては下る。カルギル・ザンスカール間の道よりも2倍疲れた。そんな苦労の果てに待っていたのは、スピティのあまりにも雄大な自然だった。

 

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 スピティの象徴「キーゴンパ」。標高3900mに位置する孤高のゴンパ(僧院)は、圧倒的な存在感を放っていた。雲も空も近い。いや、宇宙そのものが間近に感じられるような光景だ。高台の上からたった一人で静かにゴンパに向き合う時間は、至福の時だった。

 

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 今回のスピティ旅でも、山本高樹さんのガイドブックがとても役に立ちました。このキーゴンパの撮影場所も、この本を参考にさせてもらいました。すべて自分で足を運んだ著者による生きた情報が満載のガイドブック。ラダック・ザンスカール・スピティを旅する方は必携です。

 


 

 9月25日。
 スピティからレーに戻ってきた。ザンスカールやスピティに比べると圧倒的に都会。モノも情報も豊富にある。ストレスなくネットに接続できるありがたみを実感。いつも泊まっているゲストハウスに行くと、「さぁ温かいマギーでも食べて」とウェルカム・インスタントヌードルをいただく。冷えた体に染みる味!

 

 

 「年々暖かくなっているね」とラダックで出会った男は言った。「地球が温暖化しているのは確実だよ。私が子供だった頃、4,50年前はもっと寒かった。あの山の頂ももっと白かった。冬には雪が2m積もったもんだが、今は90cmだ。我々にとっては、暮らしやすくなって良いけど、やっぱり変だね」

 

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 地球温暖化が与える影響は、ラダックのような極端な気候の地域ほど大きくなるようだ。冬に暖かくなり、積雪が減るのは、住民にとって良いことだが、それだけではない。かつてはほとんどなかった大雨がよく降るようになり、洪水や土砂災害も増えている。そしてこの先何が起きるのかは誰にもわからない。

 


 

 9月26日。

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 インドの道路では交通標語が書かれた看板(石)をよく見る。ちょうどスマホでグーグルマップを見ながら走っていたときに、この標語を見たからビビった。「スマホのアプリなんて見てないで、ちゃんと道路を見ろ!」おっしゃる通りです。ながら運転は危険ですね。

 

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 交通標語って、あまりにも当たり前のことが書かれていると、「んなことわかってるよ!」って言い返したくなる。「Stay Focused!(集中し続けろ!)」って言われても、見渡す限り何もないような荒野が何十キロも続くラダックの道で、集中力を持続させるのは困難だ。

 

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 ・・・ということも標語制作者はわかっているんでしょうね。「疲れたのか。じゃあ止まって休めよ」。そう、休息も大事ですよね。周囲に人気がまったくない、雄大な風景を眺めながら一息つくと、また集中力も回復してくるのです。

 

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 「Be Mr.late, Than late Mr.」
 これはインド各地でよく見かける標語。「故人(late Mr.)になるより、遅刻者(Mr.late)になろう」という意味のようだ。「注意一秒、怪我一生」みたいなことですね。

 

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 「If married, Divorce speed」
 ぱっと見ただけでは意味がよくわからない標語もある。これはどうやら「結婚しているなら、スピードの出し過ぎはやめろよ(スピードと離婚せよ)」という意味のようだ。「Married」と「Divorce」がかかっているので「うまいこと言うた」感があったのだろうが、ちょっとわかりにくいですね。