1ヶ月以上に及んだラダック・ザンスカール・スピティを巡る旅。その最後は、悪天候に襲われた。ラダックとザンスカールの間にあるリンシェ村からの帰り道に、雪が降ってきたのだ。

 標高5000mの峠は真っ白い雪に覆われていた。積雪があと1日早かったら、通行不可能だったかもしれない。危なかった。

 

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 ラダックの自然はあまりにもスケールが大きくて、撮るたびに「こうじゃないんだ」とため息をつく。実際にこの場に立ち、薄い空気を吸い込みながら感じた印象は、写真には写らないからだ。でも、だからこそ、僕らは飽きもせずシャッターを切り続ける。前よりももっと「リアルな光」が写せることを願って。

 

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 二度目のラダック旅は、雄大な自然と人々の素朴な暮らしぶりに触れ、濃密な日々を送ることができた。そしてまた、この地に戻ってきたいと強く思った。ジュレー。必ずまた帰ってくるよ。

 

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india19-123392ラダックの女性が袋に詰めた牛糞を運んでいた。ヤクや牛の糞を乾燥させて作る牛糞燃料は、ストーブにくべると臭いもなく、煙も少ないため、ラダック地方の厳しい冬を越すために必要不可欠なものになっている。

 

india19-104837ザンスカールで出会った女性の笑顔。朝の透明な光の中で、刈り取った草を積み重ねる農作業をしていた。真っ青な空と白い頂がまぶしかった。

 

india19-119295ラダック地方の脱穀の様子。収穫した麦穂を敷き詰め、その上にヤクと馬を歩かせることで、穂から麦をふるい落とすのだ。男は高らかに歌をうたいながら、家畜たちを操る。こうした伝統的な農業が今でも受け継がれている。

 

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インド北部ラダック地方の農家に生まれたかわいい子猫。ちなみにラダックでは猫の鳴き声を「ピシピシ」と表現するらしい。ところ変われば擬音語も変わる・・・のはわかるんだけど、「ピシピシ」ってあまりにも意外ですね。

 

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ラダック地方リンシェ村にあるゴンパ(僧院)での朝の勤行の様子。冷え切った部屋に朝の光が射し込む中、早起きの僧侶たちが目を閉じてお経を唱えている。正面に掲げられているのはダライ・ラマ14世の肖像写真。チベット仏教で最も尊敬されているラマだ。

 

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インド北部ラダック地方にあるダーという村には「花の民」と呼ばれる人々が住んでいる。村の女たちは朝摘んだばかりの新鮮な花を頭に飾って、畑仕事に出かける。大きく育ったキュウリをバケツ一杯収穫した女性が、花のような笑顔を向けてくれた。

 

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ラダックの村で出会った少女。おかっぱ頭のシャイな子が、こちらを見つめてくれた。

 

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 インド政府がカシミールの自治権を剥奪し、ラダックが連邦直轄に編入されるというニュースが突然発表されたあとも、ラダック地方には何の混乱もなく、レーでもカルギルでも平穏な日々が続いている。しかしそんな様子は(特に海を越えた日本には)なかなか伝わらない。人の注意は「衝撃的で悲劇的な事件」に向けられるから、報道されるのも悪いニュースに偏ってしまうのだ。

 ある場所で長年「平和で穏やかな日常」が続いていたとしても、たった一度の猟奇殺人や自爆テロによって、すべての印象が覆されてしまう。

 だからこそ、僕らは粘り強く、誠実に、ありきたりの事実を伝え続けなければいけない。「インドは今日も平和だ」と。