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インドを代表する「赤」といえばトウガラシをおいて他にはないだろう。
インド料理の鮮烈な辛さは、このトウガラシが源なのである。当然のことながらトウガラシ畑はインド各地にあって、真っ赤に熟した実を収穫する光景をいたるところで目にすることができる。
アンドラプラデシュ州カンマンでは、女たちがトウガラシの実を手で摘んでいた。摘み取ったトウガラシはそのまま出荷されることもあるが、だいたいは天日干ししてカラカラに乾いた状態にしてから市場に運ばれるという。
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地面に広げられた大量の赤は、見た目の鮮烈さもさることながら、別の意味で鼻にも刺激的だった。トウガラシから蒸発する水分の中に、辛み成分カプサイシンが混ざっているのだろう。そばに立っているだけで目や鼻の粘膜が刺激されて、涙と鼻水が止まらなくなってしまったのだ。
もっとも、ここで働く人々はカプサイシン慣れ(?)しているらしく、まったく平気な様子だった。それどころか、(景気づけなのだろうか?)ときどき生のトウガラシをボリボリとかじりながら仕事を続けていたのだった。
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すさまじい量のトウガラシを積み上げている男たち。付近の畑から収穫したものを集めて、トラックに乗せて出荷するようだ。 |
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乾燥したトウガラシは市場で1キロ60ルピーで売られていた。乾燥させてあるから、1キロといっても相当な量である。大きなビニール袋がいっぱいになるぐらいだ。それが60ルピー(90円)なんだから安い。
ちなみにインド人の一日あたりのトウガラシ消費量は2.5gで、これは世界でもトップレベルなのだそうだ(他にはマレーシアやスリランカ、タイなども上位)。それに対して日本人は0.27gしか消費していない。インド人は日本人の実に10倍ものトウガラシを食べているわけだ。インド料理が辛い理由は、この数字を見ても明らかだろう。
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トウガラシはそのまま料理に使うこともあるが、このようにパウダー状にして他のスパイスと混ぜて使うのが一般的だ。 |
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ところで、「インド人は毎日カレーを食べてるんだってね」と言う人がいるけれど、実際にはインドに「カレー」という名前の料理は存在しない。インドの人々が、いわゆる「カレーっぽい味」のスパイシーな料理をほぼ毎食食べているのは事実だが、それぞれの料理にはちゃんと個別の名前があるのだ。「カレー」とはイギリス人が使い始めて世界中に広まった言葉で、タミル語で「食事」を意味する「カリ」という言葉が語源になったという説が有力である。
いずれにしても、日本料理にしょうゆが欠かせないように、マサラ(スパイス)抜きのインド料理は考えられない。そして、数あるマサラの中でも特に刺激的なトウガラシは、インド人の味覚の原点ともいえる食材なのである。
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